【日日是好日】幸せな居候猫シマの独白 羅漢寺住職 太田英華

西日本新聞

 私は羅漢寺の居候猫です。名前はシマです。しま模様だからではなく、すごみを利かす目つきがかつての大女優に似ていると、住職が名前を付けてくれました。

 1年前、私は出産場所を探すためにここに来ました。絶好の場所を見つけて落ち着こうとしたとき、皆に大反対されてやむなく出ていきました。その場所は本堂2階の阿弥陀様の前だったから仕方ありません。

 それから私は、麓のお宅のガレージで4匹の子を産みました。しかしご飯がなかったので、子育てしながら羅漢寺に上っては、先住猫のご飯を頂いていました。いわゆる盗み食いです。

 ある日私を見つけた住職が「わざわざ通ってご飯を食べなくても、もうここに住んだら」と言ってくれたので、子どもたちと共にご厄介になることにしました。最初は遠慮して、石垣の間の穴に家族で住んでいましたが、また住職が「そんなところにいなくて、ここにいたら」と勝手口に寝床を作ってくれたので、またご厄介になりました。

 私の子どもたちはさまざまな事件を起こしました。ある子は、前足がはれ上がって動けなくなったので、住職が病院に連れて行くと何とマムシにかまれておりました。また他の子は本堂の屋根から落ち、ちょうど下にいた住職が驚いて、病院に連れていったのですが、重傷で2度の手術を受け1週間入院しました。今では全員元気ですが、手を焼きました。

 羅漢寺には私たちの他に、もう1家族いて当初は全部で13匹でしたが今は12匹です。このうち1匹だけがシャムネコ柄で、あとはキジトラと黒ばかり。みんな名前を持っています。住職は毎日何匹いるのか確認していて、1匹でも見かけなくなると名前を呼んで探してくれます。

 皆呼ばれたら戻って来ますが、中には住職の心配をよそに、1カ月も留守にしてひょっこり戻ってくる者もおります。最近、私も数日隠れておりました。

 世の中は新しい年号になったとかで、寺も少々にぎやかだったのでしばらく屋根裏におりました。ようやく普段の寺に戻ったので、しばらくぶりに大広間の真ん中で存分に昼寝しました。

 住職はよく私たちに「仲良くするのよ」と言います。たまにけんかをするからです。私たちは気ままです。いつも誰かがいません。でも必ず帰ってきます。ご飯があるし、皆優しいからです。寺にたどり着くまで、ずっと逃げて生活してきた私ですが、最近目つきが穏やかになったと言われます。

 皆はよく私たちをうらやましいと言い、幸せだと言います。私もそう思います。だから、たまにお礼に獲物を捕ってきて、こっそり住職の机の前に置きます。住職はいつも泣いて喜んでくれます。今日も羅漢寺は穏やかな一日でした。明日もきっと穏やかです。ずっと皆と穏やかに過ごせることを願っています。 シマ

【略歴】1967年、羅漢寺27世住職の娘として生まれる。高校卒業後、大学進学のため上京。20代半ばから40歳で出家するまでフラメンコダンサーとして活動。出家後、愛知県の尼僧専門修行道場で約5年間、僧堂修行し、2013年3月に帰山。現在、羅漢寺28世住職として寺を守る。

=2019/05/12付 西日本新聞朝刊=

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