「エイリアン」捕ったぞ 鹿島の有明海干潟でワラスボ漁

西日本新聞

「有明海のエイリアン」の異名を持つワラスボ。退化した目と鋭い歯が特徴だ 拡大

「有明海のエイリアン」の異名を持つワラスボ。退化した目と鋭い歯が特徴だ

潟スキーに乗り、すぼかきを穴に突っ込む記者 「棚じぶ漁」で使うやぐら。手前の足場を渡り、やぐらから手網を下ろす

 「有明海にはエイリアンが住んでいる」。そんなうわさを聞いたが、有明海の干潟をはい回るムツゴロウは愛らしく、映画に出てくるグロテスクなエイリアンとは程遠い。どんな「未知なる生物」が生息しているのか。その漁を体験できると聞き、佐賀県鹿島市の干潟に向かった。

 佐賀県武雄市の長崎自動車道武雄北方インターチェンジ(IC)から車で約40分、鹿島市干潟交流館にたどり着く。その裏には、干満差が最大6メートルある有明海が広がる。

 「エイリアン」と遭遇できるのは干潮時。足袋とゴム手袋を借りて干潟へ向かうと、干潟での漁業歴約50年の岡本忠好さん(70)が迎えてくれた。

 長さ3メートルほどの板「潟スキー」に乗って干潟を移動しながら、先端に鉄製のフックがついた1メートルほどの弓なりの棒「すぼかき」で捕まえるという。

 四つんばいのような形で潟スキーに乗る。左足の膝をスキー上に置き、右足は泥の中に入れてかく。

 ズブ、ズブ、ズブ…。たちまち右足が沈んで動けなくなる。慌てて右足を引っこ抜いたが、その弾みでスキーが傾いて、まっすぐ進まない。干潟を滑るように進む岡本さんの背中を必死に追った。

 無数の穴がボツボツと干潟に見えた。これが「エイリアン」のすみか。二つの穴が泥の中でつながり、U字形になっているという。

 「穴さえ見つけたら誰でも捕れますよ」と岡本さん。教えてもらった通り、空気がポコポコ出ている穴を狙って、すぼかきを差し込む。思うように深く入っていかない。力を入れすぎると、スキー上でバランスを崩してしまう。

 開始から1時間が過ぎても、かごの中は空っぽ。「もっとがむしゃらに、何度もすぼかきを泥に突っ込んで」。岡本さんの檄(げき)が飛ぶ。その時だ。泥の中でフックに掛かる手応えがあった。一気に引き上げる。「捕ったぞー!」。思わず叫んだ。

 長さ約40センチの体がうねる。青紫色に光り、キュッキュッと鳴く。頭付近に指が触れた瞬間、鋭い歯でかみついてきた。

 正体は有明海に生息するハゼ科の魚「ワラスボ」。うろこや目が退化し、口から歯が飛び出す。確かにグロテスク。でも、顔を近づけて見ると、目がつぶらで、大きな口をパクパクさせている。これはこれで、キモかわいい。

 ●満潮時は「棚じぶ漁」も

 干満の差が大きい有明海では季節や時間帯によって体験できる漁が異なる。満潮時に体験できる有明海の伝統漁「棚じぶ漁」にも挑戦した。

 江戸時代から伝わる棚じぶ漁。沿岸に組んだ高さ6メートルのやぐらから、縄につないだ四角い手網(縦5メートル、横4・5メートル)を下ろし、10分おきに網を引き上げる。

 有明海は茶色く濁っており、獲物が網に掛かっているか分からない。「何が掛かっているかな…」。期待に胸を膨らませて手網を引き上げると、小さな生き物が光った。

 シラタエビだ。ハゼやウナギも捕った。

 全身を使う「すぼかき漁」と比べると泥で汚れる心配もない。やぐらの上は四畳ほどの広さがあり、くつろげる。漁体験を指導する光武俊明さん(55)は「やぐら内に弁当を持ち込み、ピクニック気分で漁を楽しむ家族連れや地元の住民が多いです」と話した。

 ▼鹿島市干潟交流館 すぼかき体験は4月中旬~5月初旬と9月下旬~10月初旬。参加費は1人3000円。定員は1日3人程度。棚じぶ漁体験は年中開催で、やぐらの使用料1000円が必要。いずれも3日前までに申し込みが必要。受付は午前9時~午後5時。問い合わせは同交流館1階の干潟体験課=0954(60)5040。

=2019/05/14付 西日本新聞朝刊=