「お金は一体どこへ」難題、マンション自治会費集め 管理会社代行のはずが…“未払い”トラブルも

西日本新聞

福岡市で配布している自治会運営についての手引書。集合住宅の加入促進についての項目もある 拡大

福岡市で配布している自治会運営についての手引書。集合住宅の加入促進についての項目もある

 マンション入居者の自治会費を集めるには、どうしたら-。福岡市博多区で自治会長を務める70代男性から、相談が寄せられた。戸別訪問するわけにはいかず、マンションの管理会社に会費徴収を頼んでいるが、ある物件では数年前から払い込みがないという。特命取材班が調べてみると、マンションが増える都市部での自治会の在り方に関し、悩ましい問題が浮かび上がってきた。

 男性は2016年に自治会長に就任した。昔ながらの商店街に加え、高層マンションも多い地区。自治会役員が日中、不在も多いマンション入居者を1軒ずつ訪ねることは難しい。このため、通常は管理会社に入居者分の会費徴収を代行してもらっている。

 このうち、部屋数100戸以上の分譲マンションについて、自治会費の払い込みが全くないことに気付いた。そもそも、入居者が自治会に加入しているという記録もない。

 試しにマンションの入居者の一人に契約書を見せてもらうと、賃料や敷金の他に、「自治会費」の項目があった。管理会社が徴収している。「入居者から自治会費を集めている事実があるなら、そのお金は一体どこへいっているのか」

 男性が管理会社に尋ねると、「マンションの管理に充てている。自治会には支払わない」。文書でも問い合わせたが回答はない。昨年4月には会費の請求調停を申し立てたが、管理会社は出廷せず、調停不成立となった。

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 取材に応じた管理会社の担当者の説明は、予想外の内容だった。「集めている自治会費はマンション内の独自の自治会のためで、地域の自治会とは全く別のものです」

 マンションのごみ捨て場に冷蔵庫やベッドマットレスなどの不法投棄も多く、それらのごみの処分費など、環境整備に使っているとのこと。マンション内の自治会には区分所有者の中から選出した自治会長もいる、という。

 マンションは1990年ごろに完成。管理会社は当初、地域の自治会に入居者分の会費を支払っていたが、数年で支払いをやめ、「マンション独自の自治会」に切り替えたと説明する。「当時は『マンションは元々の地域住民に迷惑をかけている』というスタンスで、入会に強制的な態度だった」と担当者。「自治会費の詳細な使途もよく分からず、支払いをやめることになりました」

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 取材班が話を聞いた入居者の一人は「地域の自治会費のつもりだった」と話した。一方、管理会社は契約時、問われればマンション独自の自治会であると説明しているという。地域とマンション、自分がどちらの自治会員なのか、あいまいなままの入居者もいるかもしれない。

 NPO法人「福岡マンション管理組合連合会」理事の男性は、「地域とのつながりが薄い転勤族や単身者が多く暮らすマンションと自治会を巡る問題は、都市部で増えている」と話す。管理会社が自治会費の集金代行や支払いに応じないケースは他にもあるという。

 自治会に詳しい北九州市立大の森裕亮准教授(行政学)は「本来、自治会は任意団体。自分たちで会費を徴収することが原則だが、集合住宅の加入を促進する効率的な方法として、管理会社に代行してもらうやり方が広がっている」と分析。その上で「マンション入居者自身が無関心な中、昔ながらの自治会と管理会社の間で、あいまいなままに処理されていることも多い。徴収方法を書面化するなど、トラブル回避の対策に努めるべきだ」と指摘している。

=2019/05/16付 西日本新聞朝刊=

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