ビジネスにも使える!ダルビッシュに助言したネット上の評論家による最新野球論

西日本新聞

『セイバーメトリクスの落とし穴』お股ニキ(@omatacom)著 拡大

『セイバーメトリクスの落とし穴』お股ニキ(@omatacom)著

 本書の著者は、ネット上で人気を博す“野球評論家”である。野球に関しては素人の「しがない一般人」だ。有名になったのは、ダルビッシュの「ネット友達」としてであり、冒頭にその経緯が記されている。こうした経歴や「お股ニキ」というふざけた著者名を見ただけで、食わず嫌いならぬ読まず嫌いになる人もいるに違いない。

 しかし、本文を読めば、助言を求めるプロ選手がいるのもうなずける。思考がスマートで、視野が広い。土台となっているのはこれまでネット上で「つぶやいてきた話」だが、ピッチング論やバッティング論にとどまらず、監督・采配論や野球文化論にまで広がっている。

 中でも、白眉は球団経営・補強論で、内容はそのままビジネス書として読める。本書のタイトル「セイバーメトリクスの落とし穴」は、この章からとられており、「野球論」はあくまでサブタイトルだ。新書の形で出版されているのも、ビジネスパーソンにこそ読んで欲しいという意図のあらわれであろう。

 セイバーメトリクスというのは、近年流行しているビッグデータの活用をスポーツの分野に持ち込んだものである。著者はセイバーメトリクスについては一理あるとしながらも、以下のように述べる。

 「データは決して万能ではなく、どんなに高度な統計技術を用いても、主観やバイアスが入るリスクは消しされない。元々のデータ自体が事実を100パーセント表現しているとも言い切れない」

 その具体例は野球ファンでなくとも、なるほどと思えるはずだ。AIが存在感を増す社会で重要な視点である。

 また、ソフトバンクモデルと日本ハムモデルのちがいを論じたくだりなど、今後は企業経営の助言を求める人も出てくるんじゃないかと思うほど参考になる。どのページも入口が野球なのでわかりやすく、それでいて多様な読み方ができる内容となっている。ネットの言論というとネガティブなものが取り上げられがちだが、こういう書き手に注目が集まるのなら、捨てたものではない。


出版社:光文社
書名:セイバーメトリクスの落とし穴
著者名:お股ニキ(@omatacom)
定価(税込):994円
税別価格:920円
リンク先:https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334044015

 西日本新聞 読書案内編集部

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