高野台の「地層」保存へ 大規模地滑り記憶継ぐ 5人犠牲、熊本地震の遺構に

西日本新聞

熊本地震で大規模地滑りがあった高野台地区に残されている地層。周囲で整地、緑化が進む中、震災遺構として保存する方向で検討されている 拡大

熊本地震で大規模地滑りがあった高野台地区に残されている地層。周囲で整地、緑化が進む中、震災遺構として保存する方向で検討されている

 熊本地震による大規模地滑りで住民5人が亡くなった南阿蘇村高野台地区の復旧工事現場の一角に、むき出しの地層が“震災遺構”として残されている。火山地域特有の黒色と黄色の地層が交互に積み重なり、地滑りの誘因にもなった。工事を担当する県振興局では「熊本地震の記憶を語り継ぐ遺構」として、そのままの形で保存したい考え。

 同地区は平均傾斜15度の緩斜面。村が整備した住宅地で、本震では火山灰土の表層(5~10メートル)が約600メートル滑り落ち、家屋をのみ込んだ。急傾斜地ばかりでなく、緩斜面でも大規模地滑りが発生したことは、専門家にとって驚きだった。

 保存を提案したのは熊本大「くまもと水循環・減災研究教育センター」の鳥井真之特任准教授(地質学)。鳥井さんによると、一帯は5万年前の溶岩ドーム跡で、地層は3万~4万年前の噴火降灰によって形成された。黄色い層は火山灰、黒い層(黒ボク土)は火山灰土に生えた植物などが腐食してできたとみられる。

 一般的な地滑りは、噴火に伴う軽石が風化し、粘土質となった層が滑り面となって起こるが、高野台では液状化に似た現象も見られ、旧来のメカニズムだけでは説明できないという。

 「あの時、何が落ち、どんなことが起こったのか。火山灰土とはどういうものか。実際に見て、触ることもできるような現場を残すことが、将来の防災・減災につながる」と、鳥井さんは話す。

 一帯では整地作業がほぼ終わり、緑化に向けたむしろが敷かれている。残された地層近くには京都大火山研究所があり、近く補修再建工事が始まる。村は一帯を防災公園に整備したい考えで、県は「安全性や火山研の意向も聞きながら、保存する方向で検討したい」と話している。

=2019/05/18付 西日本新聞朝刊=

PR

PR

注目のテーマ