平和を願う古賀メロディー 宮本紘視氏 

西日本新聞 オピニオン面

宮本紘視氏古賀政男音楽博物館主任学芸員 拡大

宮本紘視氏古賀政男音楽博物館主任学芸員

◆東京五輪音頭

 2020年東京五輪・パラリンピックの開催が近づいてきた。17年から、この大会のキャンペーンソングとして「東京五輪音頭-2020-」(歌・石川さゆり、加山雄三、竹原ピストル)が使用されているのをご存じだろうか。

 「東京五輪音頭」(作詞・宮田隆、作曲・古賀政男)は、1964年に開催された東京五輪への関心を高めるために、NHKが制定した楽曲だ。福岡県大川市出身の作曲家・古賀政男は、60年ローマ五輪の閉会直後にオリンピックスタジアムを訪れ、「あと4年たったら、今度はあなたの国、日本で開かれるんですよ」と言葉をかけられた。古賀は、その感動をもとに「できるだけ陽気な日本の祭りのムードを曲のなかに盛り込もう」と意識して、あのメロディーを書きあげた。64年東京五輪は、アジア初開催の五輪大会であるとともに、復興した日本の晴れ姿を世界にアピールする大会でもあった。その高揚感が感じられる楽曲は、三波春夫など多くの歌手により歌われ、大会を盛り上げた。

 オリンピックは、スポーツの祭典であると同時に、平和の祭典でもある。日本はかつて40年に、東京五輪の開催権を返上した経緯がある。第2次世界大戦の影響だ。古賀と宮田はともに、「東京五輪音頭」に平和への強い思いを込めている。日本全体も、64年東京五輪を開催することで、平和への感謝と願いをかみしめていたのではないか。

 十年一昔というが、50年以上昔につくられた楽曲が、改めて東京で開催される五輪大会のキャンペーンソングとして注目を集めるなど、古賀も思いもよらなかったであろう。ロック調に編曲された「東京五輪音頭-2020-」を聴いたら、どのような反応を示すだろうか。

 古賀が活躍した昭和の時代は、音楽を再生するにはレコードが一般的だった。現在は、インターネットを通じて、様々(さまざま)な形で多種多様な音楽を世界中で楽しむことができる。「東京五輪音頭-2020-」も、すでにユーチューブやフェイスブックなどを通じて、世界中で200万回以上も再生されている。自身が生み出した楽曲が時代を超え、平和の祭典を盛り上げるために2度にわたって使用され、世界中の人々の耳に届いていることを知ったら、古賀は作曲家冥利(みょうり)に尽きると、優しい笑顔を見せるのではないか。

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 宮本 紘視(みやもと・ひろみ)古賀政男音楽博物館主任学芸員 古賀政男関連の調査・研究・展示をはじめ、「大衆音楽の殿堂」「日本 歌めぐり」シリーズ等の展示、講座や演奏会の企画・立案・構成・進行などを手掛ける。

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