「ニュース砂漠」広がる 米東部ニュージャージー州ルポ 地方紙廃刊・縮小相次ぐ 人口減の町「苦境伝わらない」 

西日本新聞 国際面

 米国の地方メディアの衰退が深刻だ。中でも地方紙はインターネットの浸透で読者が減り、廃刊が続出。記者を削減して取材網を縮小する例も後を絶たない。結果、暮らしに関わる地域の課題についての情報が広がらず、地方の地盤沈下の一因になっているとも言われる。地域ニュースを発信する活動を公的に支援する動きも出始めているが、効果は不透明だ。民主主義の根幹である正確な情報が枯渇する「ニュース砂漠」が広がる米国。東部ニュージャージー(NJ)州のある町を訪れた。 (ワシントン田中伸幸)

 5月初旬、州南西部のグロスター郡ポールズボロ。橋を渡って町に入ると図書館がある。増改築された小ぎれいな建物の隣に、木で覆われ、ソファが軒先に放置された薄暗い廃屋が見えた。

 「町の入り口にこんな家があったら、引っ越して来たいと思わないだろ? だから取り壊すんだ」。空き家対策を町政の最重要課題に掲げるスティーブンソン町長(59)が力を込めた。

 10平方キロメートルの小さな町の主産業は石油精製。大西洋へ注ぐ川沿いに製油所が並ぶ。だがどこも機械化などで規模を縮小。1970年代に8千人だった人口は6千人を割り、町内の空き家は100軒を超える。

 2015年に初当選したスティーブンソン町長が空き家対策に熱心な理由の一つは、そこが薬物乱用の現場と化すからだ。米国では今、医療用麻薬「オピオイド」のまん延が問題化している。常習性が高く、乱用による死者が急増。ポールズボロも例外ではない。葬儀業が本業の町長はその害悪を目の当たりにしてきた。「住環境を改善して人口を増やし、薬物乱用防止や治安改善にもつなげたい」

 幸い、町は川の対岸に位置するペンシルベニア州の大都市フィラデルフィアの通勤圏にある。町が空き家を買い上げて改修し、売りに出すと数週間で買い手が付くこともある。だが町の財源は乏しい。空き家対策を急ぐため郡や州政府に補助金増額を求めるが、なしのつぶてだ。空き家を改修し販売までこぎつけるのは年5-10軒にとどまる。

 「メディアの不在も原因の一つだ」。町長はそう明かす。近隣の市は同様の対策が記事になり、注目を集めて補助金増額が認められたという。「うちも報道されれば増額への理解が得られるはずなのに…」

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