「コーヒーサロンはら」感謝の終演 大牟田の音楽文化支え56年

西日本新聞 筑後版

グランドピアノ(奧)のある店内。店主の上野由幾恵さんが1人で切り盛りしてきた 拡大

グランドピアノ(奧)のある店内。店主の上野由幾恵さんが1人で切り盛りしてきた

 大牟田市の音楽文化を支えてきた老舗喫茶店「コーヒーサロンはら」が、5月末で閉店する。グランドピアノが置かれ、多くの音楽家が来訪し、演奏会もたびたび開かれた中心商店街の名店。何より店主の上野由幾恵さん(79)は、年1回の日本フィルハーモニー交響楽団大牟田公演の事務局を担い、32年にわたり奔走してきた。56年の歴史に幕を下ろす店には、名残を惜しむ常連客が次々に訪れている。

 旧満州(現中国東北部)生まれの上野さんは、自宅に蓄音機があり、子どものころから音楽に親しんできた。結婚して福岡市から大牟田市に移住した1964年に開店。ステレオを置き、レコードコンサートが名物だった。ところが82年に付近一帯が焼ける火事に巻き込まれ、収集した約3500枚のレコードとともに店は全焼した。

 「ショックで目の前が真っ暗になった」。ところが音楽好きの常連客たちが「店の再開を」と、当時の松屋デパート近くの物件を紹介してくれた。にぎわう人通りから少し奥にあり、「音楽を楽しめる静かな環境が気に入って」半年後に再オープン。常連客の勧めでピアノを置き、生演奏会も開くようになった。

 日本フィルの楽団員だった地元出身の常連客からの依頼で、「大牟田日本フィルの会」を設立。87年から九州巡回公演のうちの大牟田公演をほぼ1人で支えてきた。指揮者や曲目決め、日程調整などを九州各地の主催者と話し合うために、年に何度も福岡市に通った。チラシ作りや広報、チケット販売、楽団員の学校訪問行事なども含め、ほぼ年間を通して駆け回った。「続けられたのは、公演に来てくださるお客さんの笑顔というご褒美があったから」と振り返る。

 ただ店の立ち仕事で腰を痛め、閉店時期を探ってきた。公演の事務局機能をどうするかが一番の気がかりだったが、まちづくりに熱意のある地元若者らが継承を申し出てくれた。来年の公演からは、若いスタッフたちと一緒に準備を進める決意だ。

 「多くの出会いに支えられ、本当に感謝しています」。松屋デパートもなくなり、人通りが少なくなった商店街。また一つ、まちの灯が間もなく消えるが、上野さんが育んできた地域の「音楽文化」は受け継がれていく。

 最終日の31日午後3時からは「ありがとうコンサート」が開かれ、店を愛した地元演奏家たちが出演する。コーヒー代500円。同店=0944(53)0430。

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