「非は韓国」国際社会に訴え 徴用工仲裁委要請 対立深まる恐れも

西日本新聞 総合面

 韓国人元徴用工訴訟問題への対応を巡り、日本政府が20日、日韓請求権協定に基づき、第三国の委員も交えた仲裁委員会の開催を韓国に要請した。韓国側の同意がなければ開かれないが、協定に基づく手続きを進めることで、国際社会に「非は韓国側にある」と訴えるのが狙いだ。だが対立が深まる恐れもあり、日韓共通の重要課題である北朝鮮の核・ミサイル問題にも影響が及ぶ恐れがある。

 「韓国側の対応を政府として見てきたが、具体的措置が取られる見込みがないと言わざるを得ない発言が続いている」。菅義偉官房長官は20日の記者会見で、韓国側の対応にいら立ちを隠さなかった。

 「発言」とは、15日に韓国側の対応責任者である李洛淵(イナギョン)首相が「さまざまな議論をしたが、対策を出すのは限界がある」と消極的な姿勢を示したことを指したものだ。

 日本政府は1月以降、政府間協議を韓国側に再三求めてきた。だが、韓国側は4カ月が過ぎても応じず「問題を放置している」(政府関係者)状況だ。

 5月には日本企業の資産売却手続きも始まった。当初は韓国側の対応を待っていた外務省だが、「韓国に非があることを国際社会に訴えるべきだ」とする自民党保守派の強硬意見に押し切られた格好だ。

 だが、文在寅(ムンジェイン)大統領が仲裁委の開催に応じるかは不透明だ。

 浅羽祐樹同志社大教授(日韓関係論)は「文政権にしてみれば予想された流れで、先延ばしにして政府間の対立は続くだろう。逆に『こんな状況だからこそ』と、日韓首脳会談を要求してくるかもしれない」と分析する。

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■韓国側「慎重に検討」  応じる可能性は低く

 【ソウル池田郷】元徴用工訴訟を巡り、日本政府が第三国を交えた仲裁委員会の開催を要請したことに対し、韓国外務省当局者は20日、「慎重に検討する」との方針を示したが「日本側の要請に応じる可能性は低い」(韓国メディア)との見方が大半だ。韓国政府は問題の長期化に伴う日韓関係の悪化を懸念しつつも、司法判断を尊重する姿勢を維持するとみられる。

 文在寅政権は、韓国最高裁が朴槿恵(パククネ)前政権の意向を受けて元徴用工訴訟の進行を遅らせたとされる事件などを踏まえ、司法判断に行政府が介入するのは三権分立に反するとの立場。李洛淵首相も15日の討論会で「さまざまな議論をしたが、政府が対策を出すのは限界がある」と述べた。

 日本側が求める2国間協議に韓国政府が4カ月以上応じなかった背景については「旧日本軍の従軍慰安婦問題を巡って、日韓請求権協定による韓国側の協議要請に、日本側が応じなかった2011年の前例を考慮している」(韓国メディア)との指摘もある。

 韓国の聯合ニュースは、日本が仲裁委開催の要請に踏み切ったことで、6月下旬に大阪で開かれる20カ国・地域(G20)首脳会合に合わせて、日韓首脳会談が実現する可能性は低くなったとの見方を伝えた。

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