新幹線 有明海ルート 長谷川 彰

西日本新聞 オピニオン面

 まだ完成もしていないのに“脱線”発言だ。

 九州新幹線西九州(長崎)ルートを巡り、長崎県選出の衆院議員が、建設への反対姿勢を鮮明にした佐賀県知事との協議を「北朝鮮と交渉するようなもの」と例えた。長崎の側のいら立ちは分からなくもないが、なんのプラスにもならない失言だ。

 この問題について「今は佐賀県にメリットがなく、負担だけ増えるという県の主張はもっとも」と語り、根本から発想の転換をと力説しているのがJR九州の初代社長を務めた石井幸孝さん(86)だ。

 いわく、今からでも遅くない、ルートを有明海沿岸の佐賀空港経由に変更し、国際物流も受け持つ路線として整備するのが最善だ-。

 東京大工学部を卒業して旧国鉄に入り、車両技術者を経て経営陣入りした人だ。JRから離れた今も鉄道問題に一家言あり、昨年、著書「人口減少と鉄道」で新幹線を物流に活用せよと説いた。

 ルート変更論は、その延長線上にあるようだ。主張は概略、次のような趣旨だ。

 JR長崎線を走る前提のフリーゲージトレイン開発が白紙となったのだから、現行計画にこだわる必要はない。

 新ルートは肥前山口から南へ向かい有明海沿岸の佐賀空港を経由、筑後川を渡り筑後船小屋で九州新幹線と合流する。途中、西鉄天神大牟田線と交差するので新駅を造り、乗り継ぎ可能にする。

 佐賀空港から佐賀県庁-JR佐賀駅-長崎自動車道佐賀大和インター間は新交通システムで結ぶ。佐賀県内の長崎線は上下分離方式でJR九州に運行を委託し、福岡都市圏との往来の利便性を上げる。

 佐賀空港は4千メートル滑走路を十分な間隔で2本設置できる余地があり、24時間体制のハブ空港に格上げ整備する。福岡空港は拡張が実現してもいずれ限界に達するので、相互連携できる。

 新幹線物流が実現すれば長崎県の港湾とも連携できる。長崎北部の佐世保とはミニ新幹線で結べば長崎側のメリットも増える-。以上だ。

 石井さんは「建設費はさほど増えない。空港整備は国家プロジェクトとして別に考えてもらう話だが」と語りつつ、持論通りなら佐賀、長崎、福岡3県はもちろん、鹿児島ルート沿線にも波及効果が、と口調は熱を帯びる。

 人口減少時代に、そんな膨大なインフラ投資なんてと、一笑に付す人も多かろう。ただ、もつれた糸を解きほぐすには発想の転換も必要ではないか。国会議員には、むしろそれを探る役目を期待したいのだが。 

(論説副委員長)

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