校則のハテナ? 記者が高校時代の体験から考えた

西日本新聞

 学校現場や当事者のさまざまな声を紹介してきた「校則の?」シリーズ。鹿児島県の高校を卒業した記者2人が体験を踏まえて取材を振り返った。

緩い規定 信頼関係が土壌に

 高校時代、校則を意識したことはほとんどなかった。親元を離れて鹿児島市郊外の男子のみの進学校に進み、3年間を寮や下宿で過ごした。制服は中学の学ランにボタンを付け替えただけ。制帽は卒業まで着用した記憶はない。髪形も自由だった。

 実家の押し入れから生徒手帳を引っ張り出して見返してみた。生徒心得で服装の規定は「本校所定の制服とする」「常に質素、清潔、端正に保つように心がける」の二つのみ。髪形は、学校と生徒との申し合わせとして極端な長髪を除いて細かな制約はなかった。

 頭髪で思い出すのが秋の体育祭。丈の長い学ランやはかま姿の生徒たちによる応援合戦が花形イベントだった。この日は髪を染めることが認められ、3年生だった私は体育祭前日、ブリーチ(脱色剤)で髪を茶色にした。普段できないことをやる高揚感で胸が高鳴ったのを覚えている。

 完全燃焼した翌日、私と親友はバリカンを手に互いの髪を丸刈りにした。残り半年を切った大学入試に向けて気合を入れるためだった。短髪をなでながら、絶対に負けられないと闘志に火が付いた。今は20年前を良き思い出として懐かしく振り返る。

 進学校のため宿題をやらないなど学業にかかわることへの指導は厳しかった。ただ、生活面は割と生徒の自主性を重んじていたように思う。深夜にこっそり寮を抜け出せばさすがに叱られたが、容儀検査のたぐいもなかった。

 多くの生徒は大学進学に向けて高校で何をするというビジョンがあった。テレビもなく、新聞やラジオで社会の動きを知る閉ざされた環境。たとえ不満があっても、ルールを逸脱することの損失をきちんと理解し、賢い選択ではないと悟っていた。

 保護者が遠くにいる分、教師や友人との距離が近く、責任と義務を身近に受け止めたように思う。下宿や寮は学校のそば。教師が訪問し、個別に語り合う機会は多かった。同じ釜の飯を食う親友とは日々の勉強から悩みまで何でも打ち明けられた。

 校則をテーマにしたシリーズはインターネットを中心に多くの反響を呼んだ。取材していると、学校と生徒の双方とも主張するばかりで歩み寄れなくなっているように感じる。名古屋大大学院の内田良准教授は「校則を細かく決めることで、ルール違反が目につくようになる」と指摘するが、同感だ。校則を破ることを恐れて規定を増やす悪循環が続き、ルールをどう理解させるかという視点が欠けている気がする。必要なのは互いを尊重し合える関係を構築できるコミュニケーション力を高めることだ。
(金沢皓介=36歳)

安易な現状容認 再考の時

 高校生の息子がいる父親は憤っていた。「説明ができないようなルールはなくすべきだ」。教師に息子の髪形の校則違反を指摘され、何度も直させたが認められなかった上、納得のいく根拠が示されなかったからだ。息子の不信感は今もぬぐえない。

 そんな父親も「校則そのものは否定していない」と言う。父親は私と同世代。校内暴力が社会問題化し、学校が混乱と管理で揺れる時代を生きた一人だ。

 私の高校は行動基準を中心に校則の厳しさで知られていた。男子校で3年間丸刈り、正門では1度立ち止まり制帽を脱いで一礼することが義務付けられた。毎朝の朝礼は駆け足での集合、整列、点呼といった具合で、不十分だとやり直された。朝夕の国旗掲揚、降納時は補習中でも、部活動中でも国旗の方を向いて立つルールだった。

 ただでさえ短い頭髪の検査は、髪を挟んだ2本の指先より長ければその場でバリカンを入れられ、下校時の買い食いが見つかればパンツ1枚で自転車を担いでの校庭3周。今なら問題になるが指導は強烈だった。

 徹底した管理教育で不合理と思えることも、当時はどこか容認する風潮があった。生徒は従うか、去るかの二者択一。「なぜ」と口にできる雰囲気ではなく、教師が好んで使っていた「服装の乱れは心の乱れ」という言葉もむなしく聞いていた記憶がある。

 近年は人権意識の高まりを受けて従来の校則に疑問の声が相次ぎ、少しずつ改善する動きがある。それでも、今回のシリーズで指摘してきたように時代遅れの規定はなお目立つ。

 学校で法教育が始まって久しい。法やルールの考え方を身に付け、主体的、積極的に社会に参加する主権者を育てるための教育だ。2016年には選挙権年齢が高校生を含む18歳に引き下げられた。30年前に比べて子どもを取り巻く環境は大きく変わっている。

 中高生にとって校則は最も身近なルールだ。しかし「守らないと叱られる」「決まっていること」、あるいは「変えるのが面倒」といった理由で、生徒も保護者も、教師までも現状を安易に受け入れてはいないか。校則が子どもの社会性を育むためのものであるならば、一度立ち止まって考え意見をぶつけ合う。それこそこれからの教育に必要なことではないだろうか。

 母校は移転して少子化に伴う生き残りなどを背景に男女共学となり、丸刈り規定は消えた。校則は今も厳しいといわれている。
(編集委員・前田英男=51歳)

「あなたの特命取材班」とは?

 西日本新聞は、暮らしの疑問から地域の困り事、行政や企業の不正告発まで、情報提供や要望に応え、調査報道で課題解決を目指す「あなたの特命取材班」を創設しました。「知りたいこと」を取材し、正確に深く報じる「ジャーナリズム・オンデマンド」に挑みます。
 知りたいことや困っていることについて、ご要望や情報をお寄せください。
ツイッターやフェイスブックの文中に「#あなたの特命取材班 」を入れて発信してください。LINEの友だち登録で取材班と直接やりとりもできます。
→詳しくは あなたの特命取材班 特設ページへ

PR

最新記事

PR

注目のテーマ