手続き明文化、 証拠開示 再審法整備へ市民の会 冤罪被害者や学者ら

西日本新聞 一面

「再審法改正をめざす市民の会」であいさつする映画監督の周防正行さん=20日夜、東京・永田町 拡大

「再審法改正をめざす市民の会」であいさつする映画監督の周防正行さん=20日夜、東京・永田町

 刑事裁判のやり直し(再審)について、法整備の徹底を訴える市民団体が20日夜、東京・永田町の国会内で発足集会を開いた。裁判のやり直しは刑事訴訟法の一部に記されているが、検察側が保管する証拠の開示や裁判期間などの手続きについて具体的な規定がなく、担当する裁判官によって審理の進め方に違いが出て「公平性に欠ける」との指摘がある。誰もが同じ条件になるよう、議員立法として証拠の全面開示をうたった刑訴法改正案を国会に提出するよう国会議員に働き掛ける。

 発足した団体は「再審法改正をめざす市民の会」。再審法は存在しないため、刑訴法の改正を目指す。共同代表として映画監督の周防正行さんや元裁判官の弁護士、冤罪(えんざい)被害者、刑法学者ら7人が名を連ねた。

 過去の再審では、弁護側の求めによって新たに開示された証拠が決定打となり、無罪になる例が多い。ただ開示の可否は裁判官の「さじ加減」で決まるため、無罪を勝ち取るまでに数十年を要することも珍しくない。九州では、1985年に熊本県で男性が殺害された「松橋(まつばせ)事件」で、今年3月末に再審無罪が出た。

 会は今後、刑訴法の改正要綱をまとめる。66年に静岡県で起きた強盗殺人事件で死刑が確定した袴田巌さん(83)のように、再審決定を受けて釈放されても、後に検察側の不服申し立てによって決定が取り消される事態が起きていることから、検察による上訴禁止の規定も盛り込む。集会を通じて世論に訴え、国会議員への要望活動を行う。

 20日の発足集会には国内外から162人が参加。3人の国会議員があいさつし、このうち自民党の鈴木貴子衆院議員は「証拠の開示や管理について適正なルールがあるとは言えない。立法府として手を尽くしたい」と述べた。

   ◇    ◇

理不尽な現状、法治国家として恥ずべきこと 共同代表・周防正行さんに聞く

 「再審法改正をめざす市民の会」の共同代表の一人となった映画監督の周防正行さんに発足の狙いや今後の活動について聞いた。

 ‐再審の現状は。

 「刑事訴訟法は『再審はできる』と書いているだけで、手続きについてはほとんどルールがない。野球もサッカーもルールがなくてはできないでしょ。これは法治国家として恥ずべきことだと多くの人に知ってほしい」

 ‐国会議員に立法化を促す取り組み。ハードルが高いのではないか。

 「法務省の法制審議会で立法化するより、ハードルはずっと低い。検察の不祥事をきっかけにした審議会の議論に実際に加わったが、省内は改革に対して抵抗勢力だらけだと感じた」

 ‐法改正のポイントは。

 「まずは証拠開示だ。求めているのは判決が確定した事件のものであり、検察にとっても問題はないはず。証拠を集めるお金はわれわれの税金。開示しない理由の方が見つけられない」

 ‐国会議員は再審や死刑問題には及び腰な印象だ。

 「票にならないから。だけど僕は、票にならない分野でも人のために努力する議員さんを高く評価し、発信していきたい。法律というのは国の形そのもの。いかに理不尽なことが行われているかを議員さんに強く訴えていきたい」

 ‐市民団体に参加することで、映画監督として政治色がつくことへの不安は。

 「『それでもボクはやってない』(刑事裁判をテーマにした作品)を作る時は客観的な立場でいたいと思っていたが、取材をして刑事司法の現場がひどいことになっていると知った。今はそれを直すためであれば、あらゆるチャンスに飛び込んでいくべきだと考えている」

 ‐2016年の改正刑訴法の付則には、再審の証拠開示を検討するとある。

 「世論の声で何とか動かさないとだめだなと思っている。映画監督という仕事柄、取材を受ける機会も多く、発信量は多い方。まずは再審の現状について一般市民に知ってもらえるよう、できるだけ分かりやすい言葉で伝え、何とか早く法改正を実現させたい」

PR

PR

注目のテーマ