無料塾、貧困の連鎖断つ 進学助け、食事も提供

西日本新聞 社会面

「マナビバ」で講師から指導を受ける中学生たち=福岡市西区 拡大

「マナビバ」で講師から指導を受ける中学生たち=福岡市西区

 学習支援から高校進学につなげ、貧困の連鎖を断ちたい‐。福岡県内のNPO法人が、生活困窮家庭の子どもの学習支援に力を入れている。子ども食堂の機能を持たせるなどして利用者も増えている。ただ、持続可能な活動を展開するには安定的な運営が不可欠。関係者は「行政からの財政支援が必要だ」と口をそろえる。

 福岡県久留米市のNPO法人「わたしと僕の夢」は2010年、生活保護を受ける家庭の小中学生らを対象にした無料塾を開いた。ほぼ毎日開く教室には、多い日は約30人が通い、宿題などに取り組む。分からない問題はボランティアスタッフが教えてくれる。

 和気あいあいとした雰囲気だが、代表の佐藤有里子さん(51)は「ほとんどの子は最初に来たときは不安を抱え、かたくなだった」と話す。スタッフや他の子どもと接するうちに、少しずつ口数が増えるという。

 勉強の合間には、フードバンクや農家から支援を受けた食材を使った温かい食事も提供。学校給食と塾でしか食事にありつけない子どももいるという。

 今春、塾に通う中学3年生31人全員が高校に進学した。塾は市の委託事業だが、食事の提供は民間の善意で成り立っている。佐藤代表は「活動を続けるには行政の財政支援が欠かせない。貧困の中にある子どもたちが、将来に夢を持てるようにしたい」と話す。

   ◇    ◇ 

 国は15年度に生活困窮者自立支援制度を始め、困窮家庭の子どもの学習を支援する自治体の事業費を半額補助する。厚生労働省によると、18年度は536の自治体が制度を利用した。

 手法は自治体によってさまざまで、主に会場を設ける「拠点型」と、家庭を訪れる「訪問型」がある。

 町村の事業を担う福岡県は18年度、18町で拠点型を行い、約240人が利用した。一方、福岡市は本年度から拠点型をやめ、学習支援員を派遣する訪問型だけにした。市生活自立支援課は「会場を設けることで、利用者が生活困窮者と特定される」と説明。公立小全校で放課後に学習支援をしていることも理由の一つだという。

 「行政は拠点型のニーズを十分把握できているのだろうか」。同市西区のNPO法人「いるかねっと」の田口吾郎代表理事(41)は疑問に思う。NPOは市内約20カ所で無料学習教室「マナビバ」を開く。教室は主に500世帯以上の公営団地がある校区に置く。

 週1回程度開催し、通うのは主に高校受験を控えた中学3年生。スタッフの松川皓さん(30)は「家ではきょうだいの世話で忙しい子どももいる。教室は落ち着いて勉強できる場になっている」と話す。今春は教室に通う中学3年生約80人全員が高校に進学した。

 ただ、資金面では苦境に立たされる。18年度の運営費約1300万円は企業からの助成金などで賄った。田口さんは「拠点型の学習支援として国の制度の対象になると思ったが、市は明確な理由を説明しないまま委託しなかった」と話す。

 「子どもにとって必要な活動との自負はあるがNPOの体力も限界がある。市の委託を得られれば活動の幅を広げられるのだが」。田口さんはもどかしい思いを募らせる。

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西日本新聞・社会部

メールアドレス:syakai@nishinippon.co.jp / ファックス:092(711)6246

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