家具に「デザイン思考」新ジャンル開発 佐賀市の諸富家具

西日本新聞 佐賀版

新製品について協議するレグナテックの社員(県工業技術センター提供) 拡大

新製品について協議するレグナテックの社員(県工業技術センター提供)

レグナテックがデザイン思考で開発したバッグの置き場「エヴニッシュ」 毎日使う物の〝置き場〟として開発した試作品(レグナテック提供)

 佐賀市諸富町で生産される「諸富家具」が、既存のジャンルにとらわれず新しい家具のあり方を提案している。ユーザーが望むことや困っていることを掘り起こして問題解決を図る「デザイン思考」と呼ばれる手法を用い、椅子でも机でもない、初めての家具を完成させた。デザイン思考はすでにいろんな工業製品に取り入れられているが、家具業界では珍しいという。

 床に置いた長方形の板に等間隔で一列に並んだスチール製の4本の棒が、斜め上に向かって伸びる。大人のひざぐらいの高さには、棒に支えられた板がやや斜めに傾いた状態で据え付けられていた。

 一体、これは何の家具だろうか‐。一見すると、用途は分からないが、実はバッグを置くための家具。諸富家具メーカー「レグナテック」(佐賀市諸富町山領)が、デザイン思考で開発した第1弾の製品「エヴニッシュ」(高さ73センチ、横48センチ、幅32センチ)だ。

 「こうやってかばんを置くのに使います」。同社取締役の樺島賢吾さん(29)が使い方を見せてくれた。上部の板を若干斜めに傾かせているのは、かばんの型崩れを防ぎ、荷物を取り出しやすくなるように工夫したためという。

 同社は県工業技術センターからデザイン思考のモデル企業に選ばれ、営業や開発、製造のメンバーが横断的に集まるチームを結成。同センターからノウハウを習得し、2016年度から研究を始めた。

 チームは消費者の潜在的なニーズを発掘するため、社員や知人の行動を観察。すると、かばんが床に無造作に置かれ、ジャケットが椅子やソファに掛けられるなど、毎日使う物の“置き場”がないことに気付いたという。

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 「日常的に使うのできっちり収納するまではいかないが、床に置くのは美観を損なうため、抵抗感があるのではないか」。チームは仮説を立てて試作を重ね、「バッグの置き場」という新たな家具のジャンルを発案した。

 1月にあった展示会でエヴニッシュをお披露目し、これまでにインテリアショップなど6店舗と契約が成立した。樺島さんは「これまでの家具の概念から外れ、ビジネスチャンスを作りたい」と話す。

 県工業技術センターによると、デザイン思考は米国でいち早く浸透し、近年、日本の製造業もこぞって取り入れている。

 例えば、従来の歯磨き粉の入れ物はチューブ状でふたをねじって開閉するのが主流だったが、立てられるパッケージの登場で置き場所を取らなくなり、ふたをワンタッチで外せるようになった。

 他にも、泡状のせっけんが出るハンドソープはワンプッシュで1回分を使い切れるため、これまでの固形のせっけんを使い回さずに済む利点がある。

 県工業技術センター生産技術部の佐藤彰さん(49)は「日用品や住宅設備、家電製品ではデザイン思考がすでに進んでいる。諸富家具にもいち早く取り入れて広めたい」と語る。

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 諸富家具は1955年、筑後川に橋が架かったのを機に福岡県大川市の業者が進出して形成された。婚礼家具を中心に成長してきたが近年、生活様式が変化。整理だんすに代わって室内にクローゼットが備え付けられ、壁に掛けられる薄型テレビの登場でテレビ台の需要は減った。

 諸富家具振興協同組合理事長で平田椅子製作所社長の平田尚二さん(52)は「テレビ台の中にDVDやデッキではなく他の物が置かれるなど、本来の機能や用途と違う使われ方をしている家具がある」と指摘。安価な量販店や輸入品の攻勢にもさらされ、協同組合の加盟社は約40年前の40社から34社に減少した。

 同社も昨年度からデザイン思考による製品の開発を始めた。平田さんは「開発の新たな切り口を増やし、個々の企業がブランド化できるように組合全体で取り組んでいきたい」。産地として巻き返しを図るべく、新たな挑戦の日々が続く。

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