雨で部屋にこもっている女が、別れた男を思い出す

西日本新聞 オピニオン面

 雨で部屋にこもっている女が、別れた男を思い出す。八代亜紀さんは「雨の慕情」で「憎い 恋しい 憎い 恋しい」と女心を切々と歌った。

 江戸末期に長崎・出島のオランダ商館医だったシーボルトも、雨音に慕情を募らせたのだろうか。幕府禁制の日本地図を国外に持ち出そうとして国外に追放される。帰国後に「日本植物誌」を欧州で刊行し、めでたアジア原産のアジサイを「ヒドランゲア・オタクサ」と紹介した。オタクサは長崎に残してきた恋仲の楠本たきの愛称「おたきさん」にちなんだとされる。アジサイの花言葉の一つは「浮気」。その花言葉が当時あったかは知らないが、あったとしたら博識家にしてはうかつに過ぎる。それも慕情ゆえか。

 シーボルトにあやかった「ながさき紫陽花(おたくさ)まつり」が長崎市で25日に始まる。沖縄が梅雨入りし、これから前線が九州へと北上する。ひと雨ごとにアジサイは色づき、艶を帯びる。 (大淵龍生)

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