参院歳費削減案 定数増は正当化できない

西日本新聞 オピニオン面

 抜本的な改革を怠って、その場しのぎの弥縫(びほう)策に頼ってしまった付けが回ってきた-と言えるのではないか。

 参院議員の歳費を削減する法案が、今国会で審議入りできないまま、迷走している。

 なぜ参院に限って歳費を減らすのか。今夏の参院選から「1票の格差」是正を名目に参院定数が増えるからだ。

 10月からの消費税増税を控え、国会も身を切る改革に取り組む姿勢を示す必要がある-と与党の自民、公明両党は主張する。もっともな意見に聞こえるが、本をただせば与党が昨年、野党や世論の反対を押し切り、参院定数6増の改正法を強引に成立させたからではないか。

 定数増は、議員歳費をはじめ公設秘書の人件費など税金で賄う経費の増加を伴う。行政改革や国会議員の削減を求める世論にも逆行する。

 そこで、与党が繰り出したのが、議員立法による参院議員歳費削減法案だ。定数6増のうち今夏の参院選から改選数が3増えるので、向こう3年間に限って歳費を議員1人当たり月7万7千円減らす。これで増やした議員3人分の経費が節減できるという。

 ちょっと待ってほしい。歳費を削減して経費の帳尻を合わせれば、定数増が正当化されるわけではない。そもそも「1票の格差」是正の手法は定数削減が常道だ。放置すれば格差が拡大して選挙無効の司法判断が出るのを恐れ、定数増という奇策でとりあえず窮地を脱した-というのが実態ではないか。

 しかも、この定数6増は、前回参院選から導入された合区「鳥取・島根」「徳島・高知」の両選挙区で議席を失う自民党議員を救済する目的があった。まさに党利党略である。さらに個人名の得票順に当選者が決まる非拘束名簿式の比例代表の一部に、各党が事前に定めた順位で当選者を決める「特定枠」が設けられ、一段と複雑になった。

 歳費削減法案に対し、野党はその原因となった定数増そのものに反発している。参院に限って歳費を削減して衆参両院間で差が生じれば、「両議院の議員の歳費」を規定した憲法49条に抵触するとの指摘もある。

 国民民主党は定数を元に戻す定数6減法案を提出する一方、歳費の自主返納という妥協案も示した。日本維新の会は衆参両院の歳費を2割カットする法案を提出しており、与党案の成否は判然としない。

 急がば回れと言うではないか。歳費削減という小手先の議員立法に精力を注ぐより、1票の格差と定数の在り方について二院制における参院抜本改革の視点で議論を深めるべきだ。

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