差別伝える建物7月解体 ハンセン病の受刑者収容、菊池医療刑務支所

西日本新聞 熊本版

解体される熊本刑務所菊池医療刑務支所跡の庁舎建物 拡大

解体される熊本刑務所菊池医療刑務支所跡の庁舎建物

特別法廷が開かれた跡地には高さ10メートルを超す樹木が茂っている。右は解体予定の旧庁舎

 ハンセン病患者の受刑者専用に造られた合志市の熊本刑務所菊池医療刑務支所の解体工事が近く始まる。ハンセン病患者とされた男性が無実を訴えながら死刑になった「菊池事件」の出張裁判(特別法廷)が開かれ、閉鎖後も深刻な差別を伝える遺構として保存が模索されてきたが、7月中に姿を消す。跡地には、合志市が新設する小中一貫校が2021年4月に開校する。

 同刑務支所は1953年、全国の国立ハンセン病療養所から受刑者を集める目的で、菊池恵楓園に隣接する現在地に開設。戦前は、療養所長が裁判を経ずに入所者を療養所内の監禁室に収容していた。重い懲罰を科すため群馬県の栗生楽泉園に設けられた監禁室「重監房」では23人が死亡。戦後、国会で取り上げられて重監房は閉鎖されたが、刑務支所には監禁室に代わる役割も求められていた。

 同刑務支所には延べ117人が収容されたほか、開所直後には菊池事件の被告の特別法廷も開かれた。86年に現存する庁舎に建て替えられ、96年のらい予防法廃止を受け、翌97年に廃止された。菊池恵楓園入所者自治会の志村康会長(86)は「この庁舎の収監者は10年で1人。国は不要な人権侵害の施設をわざわざ建て替えた」と振り返る。

 九州財務局は2008年、跡地を売却する入札をしたが「差別の実態を伝える施設」として保存を求める声が上がり売却は中止に。市民団体が人権啓発施設として活用する署名を呼び掛け10万人超が賛同したが、計画は進まなかった。人口増が続く合志市が学校用地にすることで決着した。

 新設校は生徒数約千人。敷地面積約5万7千平方メートル、3階建ての校舎は延べ床面積約1万1千平方メートル。国が校門に刑務支所の歴史を伝える碑文を設置する。

 菊池恵楓園入所者自治会の太田明副会長(75)は「地域の要望に応えて学校ができ、碑文も設けられ、良い形で解決できる。解体は歴史の転換点になる」と話した。

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