高取小の桜、校舎拡張で伐採へ “恩師の教え”伝え70年

西日本新聞 ふくおか都市圏版

立派な枝振りに育った高取小の桜の木を眺める卒業生ら。手前中央が中村弘さん 拡大

立派な枝振りに育った高取小の桜の木を眺める卒業生ら。手前中央が中村弘さん

満開となった高取小の桜並木=4月上旬(西田忍さん撮影)

 登下校する子どもたちのそばに70年近くたたずんできた高取小(福岡市早良区)の桜の木8本が、本年度中に切られることになった。児童数が増え続ける中、校舎の拡張工事に伴う伐採だが、卒業生を中心に惜しむ声が広がっている。元教員で近くに住む中村弘さん(87)には、桜にまつわる恩師との「秘話」があった。

 中村さんが初めて着任したのが、1950年に開校したばかりの高取小。当時の校長は吉岡紅葉朗(もみじろう)さん(故人)といい、中村さんが簀子小(中央区)5年だった頃の学級担任。厳しい中にも優しさがあり、中村さんが教員を目指すきっかけとなった一人だった。

 「せっかく桜の苗木があるから植えてきて」。吉岡さんに促され、新人教師の中村さんは校門の脇に並んでいた桜に苗木を加えた。吉岡さんは植樹を見守りながら、こう語りかけた。「この桜の木と競いながら成長するように」

 枝を広げた桜はその後、児童の卒業と入学に花を添え、通行人にも春の訪れを告げてきた。中村さんはしばらくして別の小学校に異動したが、近くを訪れる機会があるたびに学校の前を通り、桜の様子を気に掛けてきた。

 時は流れ、中村さんも校長になり、80年代後半に西区の愛宕小に着任。既に退職していた吉岡さんが学校を訪ねてきた。

 吉岡さん「桜を植えた時に言ったこと。覚えとる?」

 中村さん「もちろん覚えています。桜と競い合って成長しろ、と」

 吉岡さん「校長になったんだから、成長したかな」

 かつての自らと同じ立場になった中村さんに、吉岡さんは目を細めた。

   ◇    ◇

 桜の木と同様に、高取小も大きくなってきた。設立当初は約千人だった児童数は約1250人に膨らんだ。市教育委員会は、2022年度には1300人ほどに増えると試算している。

 関東など遠隔地からの転入者に人気が高い一方、親の転勤と同時に再び転校していく子も多い。短期間でも幼少期を過ごした学舎や地域を「第二のふるさと」と感じてもらいたいと、地元に住み続ける卒業生が中心となり、1999年に初の同窓会を開いた。

 その後も5年置きに同窓会はあり、毎回約200-300人の卒業生や元教員が参加している。今年は小学校の創立70周年の一環として10月5日に開く予定で、4月から実行委員会を開いて準備を始めている。

 そこでも桜の木はたびたび話題になり、「ただ伐採されるのはもったいない」との声も出る。同窓会長で、高取焼味楽窯の十五代亀井味楽さん(58)が桜の枝を灰にして釉薬にまぜ、同窓会の記念品として湯飲みを制作することも決まった。

 同窓会の顧問でもある中村さんは「桜を切ってほしくはないが、今後の発展を考えるとやむを得ない」と考える。時代は変わり、あの桜の木も姿を消す。ただ恩師から受け継いだ「人の痛みが分かる教育」は、高取小の伝統として残ることを願っている。

福岡県の天気予報

PR

PR

注目のテーマ