市、三セクに「つけ回し」 西鉄久留米駅東口再開発 事業収支赤字に

西日本新聞 筑後版

 36年前、久留米市が西鉄久留米駅東口で主導した再開発事業の核として生まれた商業ビル「リベール」(地上6階、地下2階)。市監査委員は3月、ビルを運営する第三セクター「久留米都市開発ビル」について異例の2度目となる監査結果を公表し、三セクから約21億円の回収は困難として債権放棄や譲渡を含むとみられる「問題の解決」を市に迫った。今も巨額の未回収金が残るのはなぜか。経緯をたどった。

 「母都市・久留米の都市機能を結集した玄関として新しい街の核となるものと期待する」。1983年8月、西鉄久留米駅東口再開発ビルの開業式典。会場を埋めた地元経済人を前に、当時の近見敏之市長(故人)は胸を張った。

 再開発事業はリベールに加え、岩田屋久留米店新館(3月閉館)とホテルが入るビル(地上9階、地下3階)の計2棟を建設。回廊広場でそれらと駅を結び、回遊性を高めるのが狙い。事業費161億3千万円の一大プロジェクトだった。

 再開発事業計画が認可された74年以前の駅周辺は、久留米井筒屋(2009年閉店)や中心商店街のある西口側に対し、東口側は商店や住宅が密集。高層の建物は72年開業の久留米岩田屋(現在の岩田屋久留米店本館)のみだった。

 助役を2期務め、市長4期目だった近見氏にとって二つのビルの建設は、福岡都市圏への買い物客流出に歯止めをかける「長年の念願」だった。

 だが事業は初手からつまずいた。市は地権者の同意取り付けや商店街との調整に手間取り、事業完了は当初計画より7年遅れた。その結果、土地取得費や立ち退き補償費、建設費などが膨らみ、実質収支は約19億6千万円の赤字となった。

 市街地再開発事業では、事業主体が事業費を負担し、新たに生まれたビルの床(保留床)の権利を売って賄うのが原則。市は地銀などとともに、ビル運営を担う久留米都市開発ビルを設立。保留床を約49億6千万円で三セクに売却し、約19億8千万円を受け取った。残りの約29億7500万円はあえて長期の分割払いとし、利子分で赤字を穴埋めするスキーム(枠組み)を描いた。当時の高金利を背景に、支払いは可能だと判断したようだ。

 三セクにはテナント誘致が見込みやすいビル1、2階の保留床が少ないなど、不利な条件が重なった。そのため割高なテナント賃料を設定するしかなく、90年代以降、郊外型店進出の影響で買い物客が減ると、撤退するテナントが相次いだ。

 経営に行き詰まった三セクは2002年9月、民事再生法の適用を申請。負債総額は44億6千万円に及んだ。経営状況を調べた2003年の市の監査は「(市は)事業の諸課題のつけ回しを会社(三セク)に対して行ったと見られても仕方がない」と断じた。

■再生法適用後も厳しい経営

 リベールを運営する第三セクター「久留米都市開発ビル」が民事再生法適用を申請した2002年前後、市は三セクの経営支援に取り組んだ。主なものとして、当時の未回収金約29億円の利息と、約2億2千万円の債権放棄▽地下駐車場を債務(約5億3800万円)との相殺で取得し、三セク側に無償貸与する▽リベールに市の子育て支援施設を入居させ、賃料を支払う-が挙げられる。

 しかしその後も三セクの経営は改善せず、3月公表の市監査によると、三セクは03年策定の再生計画で年4億円程度の売り上げを見込んだものの、3億円程度で推移。14年度以降は3億円を下回っている。

 監査委員は約21億円の回収について、市と三セクが再生計画が終了した2013年度からの4年間に年500万円ずつ返済するとした協定を締結し、17年度以降も同額の協定を結んだ点を疑問視。「市は単純計算で完済に400年を超える非現実的な数字と認識していた」と指摘した上で「見通しが全く立たない中で2回目の協定を締結したのは、単に課題の先送りを行ったと評価されてもやむを得ない」と批判した。

 さらに監査委員は約21億円の回収に代えて、市の抵当権が設定されているリベールの土地や建物を取得する代物弁済も選択肢として提示しており、市の今後の対応が注目される。

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