宿泊税、急転歩み寄り 福岡県と市が合意 五輪見据え早期導入へ

西日本新聞 総合面

 宿泊税導入を巡る福岡県と福岡市の対立は急転直下、24日のトップ会談で決着した。大勢の訪日客が見込まれる2020年東京五輪・パラリンピックなどの国際的なビッグイベントを控え、6月議会も迫る中、早期に税創設を図りたい県と市の双方が歩み寄った形だ。ただ、真っ向から主張が対立してきた問題なだけに、水面下では激しい駆け引きが繰り広げられていた。

 24日午後、福岡市内のホテル。一対一での約30分の会談を終えた小川洋知事と高島宗一郎市長は、晴れ晴れとした表情で報道陣の前に姿を現した。

 「(市)150円と(県)50円。県には理解をいただき、この配分割合になった。感謝したい」。高島市長がこう述べると、小川知事は「(県と市の)役割分担に応じて考えた税額だ」と応じてみせた。

 福岡市長選(昨年11月)、県知事選(今年4月)を挟んで約半年間にわたった県と市の実務者協議は終始、議論がかみ合わなかった。県は県内一律200円の課税を検討したが、市もいち早く宿泊税導入を決め、税額を同じく200円と設定。小川氏は福岡市内の税額を「県100円、市100円」とする妥協案を示したが、高島氏は「市内での県税課税は一切認めない」との姿勢を崩さず、膠着(こうちゃく)状態が続いていた。

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 東京五輪までの導入を目指すことを公言してきた小川氏にとって、6月議会への条例案提出は「タイムリミット」(県幹部)。県はゴールデンウイーク直前の4月25日、市側に「県税を認める考えはないか」などと打診したが、市の姿勢に変化はない。

 5月に入り、事務方による協議で、互いに課税して納税者の負担増となる事態を避けるため「税額上限は200円」との一致点は見いだした。だが同21日、県側が「条例上はともに100円。県から市に補助金を交付することで実質的に県60円、市140円」と提案したのに対し、市側は「話にならない。白紙だ」と門前払い。両者の溝は深いと思われた。

 ただ、並行して市関係者と接触していた県議会筋は異なる情報を把握していた。「高島氏は譲れるラインとして『県50円、市150円』との案を持っている」‐。23日、服部誠太郎副知事は光山裕朗副市長に電話をかけ、こう切り出した。「県50、市150でどうでしょう」。トップ会談の扉がようやく開いた。

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 高島氏は記者会見で「知事選でも市税として徴収し、広域に必要な財源は県に渡すと言っていた。今回の合意内容と同じだ」と指摘。高島氏周辺も「満額回答だ」と話す。一方、小川氏も「県の課税を認めさせることができた」と評価。50円の譲歩に伴い、市内で県が担う広域的な事業を市が行うことも妥結し、周囲に「納税者の負担も増えずに済んだし、県全体で観光振興ができる態勢も整えられる」と語った。

 互いに交渉決裂をちらつかせ、一時は感情的な対立にまで発展した「宿泊税論争」は、何とか出口にたどり着いた。両氏は会談でこんな言葉を交わしたという。「どっちが勝ち負けなんて言うのはやめましょうね」

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■ホテル、旅行者とも賛否

 宿泊税を巡り、宿泊業関係者や旅行者からは賛否両論の意見が出た。

 福岡市・天神のビジネスホテル支配人は「200円でも値上げすれば客が他に流れて価格競争になる。当面は税込み料金で据え置く」とホテル側が宿泊税分を負担する考えを示した。別のビジネスホテル関係者は「客足に影響が出るほどの額ではない」と語った。

 福岡市博多区のホテルオークラ福岡は、宿泊料が1万円台から数十万円と幅広い。担当者は「税額の差に納得できない客に対してどう説明すればいいか。一律が望ましかった」と話した。

 旅行者の反応も分かれた。長崎県五島市から福岡市を訪問中の女性(60)は「旅行者の役に立つなら構わない」と肯定的。就職活動中の熊本市の男子大学生(21)は「アルバイトでためたお金で泊まっている。学生にとっては積み重なると大きい」と渋い表情だった。

◆人材育成に活用を

 九州産業大の千相哲地域共創学部長(観光学)の話 宿泊税を何に活用するかが大事。まず、必要なのは観光で利益を生むために市場調査や分析ができる人材の育成だ。福岡市の魅力を磨き、より多くの観光客を呼び込むことで県全域への波及効果が期待できる。ただ、前提になるのは市と県の効果的な連携であることを忘れてはならない。

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■「取りやすい税」 全国に広がる 4自治体が導入済み

 宿泊税は、2002年の東京都を皮切りに、17年に大阪府、18年に京都市、今年4月に金沢市が導入。北海道倶知安(くっちゃん)町が11月に創設するほか、沖縄県や奈良県も検討するなど活用が全国の自治体に広がっている。

 背景にあるのは、訪日外国人客(インバウンド)の急増だ。宿泊税によって、案内板の多言語化や無線LANの整備など受け入れ環境を受益者負担で充実させることができるが、住民以外が納税者で負担感も少ないとされる。「取りやすい税」であり、外国人客の増加を追い風に税収を拡大したい思惑もあるようだ。

 外国人客の急増で渋滞や騒音、ごみの放置など「オーバーツーリズム(観光公害)」が顕在化している地域もある。受け入れ環境の充実で満足度を高めてリピーターを増やす一方、市民生活と調和した持続可能な観光振興に財源を振り向けることも重要になっている。

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