諫干請求異議訴訟、開門無力化見直しも 漁業者側会見 最高裁の判断期待 

西日本新聞 社会面

最高裁が弁論を開くことが決まり、記者会見する馬奈木昭雄弁護団長(右)=24日午前、福岡市中央区 拡大

最高裁が弁論を開くことが決まり、記者会見する馬奈木昭雄弁護団長(右)=24日午前、福岡市中央区

諫早湾干拓事業の開門問題を巡る動き

 国営諫早湾干拓事業(長崎県諫早市)を巡り、国が漁業者側に潮受け堤防排水門の開門を強制しないよう求めた請求異議訴訟の上告審が開かれることが決まったことを受け、漁業者側弁護団は24日、福岡市内で記者会見し、確定した開門判決を事実上無力化した二審福岡高裁判決の判断を最高裁が見直す可能性があるとの見方を示した。上告受理の理由に、開門を命じた確定判決の効力に関する主張が認められたという。

 最高裁は今月22日付で、確定判決の効力の主張についてのみ上告を受理し、その他の主張は退ける決定をした。弁護団は「法曹関係者が一番最初に教わるような基礎的な点で、最高裁が高裁の判決がおかしいとの指摘に理解を示した形になる」と強調。最高裁の今後の判断に期待を示した。

 上告審弁論は7月26日にあり、最高裁は自ら結論を出すか、福岡高裁に審理を差し戻す。馬奈木昭雄弁護団長は「最高裁は二審判決を破棄し、高裁に差し戻した上で議論することになるのではないか」と述べた。

 開門を巡っては、漁業者は国に開門を求めて提訴し、福岡高裁は2010年、国に5年間の開門を命じ、確定。一方、昨年7月の請求異議訴訟の二審福岡高裁判決は「漁業者の共同漁業権が13年8月の更新期限の経過で消滅し、開門請求権も失われた」と認定。国の請求を認め、10年の確定判決を事実上覆す判断をした。

 弁護団は「確定判決は国が13年以降も開門の義務を負うと認めているのに、二審判決が13年8月で漁業者の漁業権が消滅し、開門請求権も失われたと認定したのは民事訴訟法の解釈を誤っている」として、上告受理を申し立てていた。

 干拓事業を巡っては、これらの訴訟のほか、営農者側が国に開門差し止めを求めた訴訟で長崎地裁は13年、開門禁止の仮処分決定を出した。「開門」と「開門禁止」の司法判断のねじれが生じ、問題は混迷を深めている。国は長崎地裁仮処分決定など確定判決後の事情変更を理由に請求異議訴訟を起こしていた。

■「早期解決和解のみ」 弁護団

 諫早湾干拓事業を巡る請求異議訴訟で最高裁が弁論を開くと決め、国の請求を認めた二審福岡高裁判決が見直される可能性が出てきたことについて、24日に記者会見した漁業者側弁護団は「極めて合理的な判断であり、紛争の早期解決を期待したい」と語った。

 弁護団は会見で、最高裁が和解協議について言及するのではないかと予測。馬奈木昭雄弁護団長は「事業は漁業者だけでなく営農者にとっての問題でもある。解決の道は和解しかない」と強調した。

 開門を命じた福岡高裁判決(2010年)は、当時の国側が上告せずに確定。馬奈木団長は「国は判決を受け入れると国民に約束した。その約束と相反する姿勢は許されない」と指摘した。

 一連の訴訟は長期化も大きな問題となっている。堀良一弁護士は会見で、自分の目で開門を確かめたいと願っていた70代の漁業者が亡くなったことを明かし、「非常に悔しい思いをした。一日も早い解決を最高裁に迫りたい」と述べた。

 横浜国立大大学院の宮沢俊昭教授(民法)は「二審判決の破棄の可能性が高い手続きに入ったことは間違いない」とした上で、「この問題をどう解決したらいいのか。地域の将来像を含めて着地点を考える必要がある」と話した。

■農相は言及避ける 基金案方針は維持

 吉川貴盛農相は24日の閣議後記者会見で、国営諫早湾干拓事業の潮受け堤防排水門の開門を巡る訴訟で国の主張を認めた高裁判決が見直される可能性が出てきたことについて「予断を持って答えるのは差し控えたい。関係省庁と連携しつつ、適切に対応していく」と言及を避けた。

 今後の対応については「開門によらない基金による和解を目指すことが、問題解決の最良の方策」と述べ、漁業振興基金で漁業者との和解を目指す方針を維持。法廷闘争の長期化に関しては「長期化してどうのこうのと言うのは差し控えたい」と述べた。

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