プリツカー賞受賞 磯崎建築 九州が育む 北九州市に公共5施設

西日本新聞 夕刊

1974年に完成した北九州市立中央図書館。現在は市立文学館も入る=同市小倉北区 拡大

1974年に完成した北九州市立中央図書館。現在は市立文学館も入る=同市小倉北区

北九州市立中央図書館の内部 西岡弘さん 帆船のマストを思わせる柱ではりをつり上げる西日本総合展示場本館=北九州市小倉北区 北九州国際会議場。海のすぐそばにあり、JR小倉駅からも近い=同市小倉北区 波打つ天井に星空をイメージした照明が光る北九州国際会議場の内部 1974年完成の北九州市立美術館は、見た目から「双眼鏡」とも呼ばれている=同市戸畑区 市立美術館別館は1986年に増築された

 米プリツカー賞を受賞した建築家の磯崎新さん(87)=大分市出身=は、九州で多くの建築を手掛けた。北九州市立美術館などの代表作がある同市は受賞決定を受け、磯崎さん設計の五つの公共建築を巡るツアーを20日、建築関係者やメディア向けに実施した。磯崎さんの事務所に14年間勤務した西日本工業大客員教授の西岡弘さん(74)が解説し、九州に磯崎建築が多い秘話なども明かされた。

 小倉港(同市小倉北区)の海沿いには、帆船のマストを思わせる鉄柱が並ぶ。ワイヤで外から建物のはりをつる、つり屋根構造を連続させた西日本総合展示場本館。1977年建築で、「直接または間接に水がデザインの主題となっていた」と磯崎さんは説明している。

 隣には90年建築の北九州国際会議場がある。波打つような屋根に、複雑な立方体を組み合わせた外観。建物内に入り、西岡さんに促されて見上げると、天井はうねり、小さな照明がきらめく。「海底から見上げる星空をイメージしている」と西岡さん。見たことはない海底からの星空なのに、既視感がある。不思議な感覚に包まれた。

 西岡さんは北九州国際会議場を、建築表現の自由さを重視したポストモダン建築の代表作と評価。「新幹線が乗り入れるJR小倉駅が近く、対岸は工場群、港にはフェリーが発着する。いくつもの特色のある複雑な立地に、ポストモダン的な強い個性が合っている」と強調した。

 丘の上に双眼鏡が突き出したような市立美術館(74年建築)と別館(86年建築)。小倉城の隣には緑青の銅板屋根が輝く市立中央図書館(74年建築)。市内には74年から90年にかけて磯崎さんが手掛けた五つの公共施設がある。西岡さんは「公共建築で、同じ建築家の設計が続く例は少ない。故郷の大分市と北九州市は突出している」と話す。

 なぜ北九州市に多いのか。西岡さんによると、建築への理解が深かった元市長、故谷伍平さんの存在が大きいという。「磯崎さんが大建築家になると予測して任せた谷さんには先見の明があった」と指摘する。

 磯崎さんは、谷さんの他、福岡シティ銀行(現西日本シティ銀行)元頭取の故四島司さん、学校法人岩田学園(大分市)元理事長の故岩田正さんの3人を「パトロン」と呼んだ。JR博多駅前の西日本シティ銀行本店や、岩田学園校舎を30代~40代前半で設計し、評価を高めていった。西岡さんは「若い頃から期待された磯崎さんを、九州出身ということもあって地元の人が応援した」と背景を語る。

 磯崎さんは料亭や個人住宅などの小規模建築も多く手掛けた。年数を重ね、取り壊される建物も出てきている。西岡さんは「建築と経済は無縁でいられない以上、解体がやむを得ない時もある。ただ、むやみに壊すばかりでなく、保存についても考えてほしい」と呼び掛けた。

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