【DCの街角から】「米国のニュースは見ない」

西日本新聞 夕刊

スティーブンソン町長(左)の自宅には当日の地方紙のほか、過去の新聞が多数保存されていた。「今の米メディアはトランプ大統領を題材にしたエンターテインメント色が強すぎる」と嘆いた=1日、ニュージャージー州ポールズボロ 拡大

スティーブンソン町長(左)の自宅には当日の地方紙のほか、過去の新聞が多数保存されていた。「今の米メディアはトランプ大統領を題材にしたエンターテインメント色が強すぎる」と嘆いた=1日、ニュージャージー州ポールズボロ

 「天皇が交代したらしいね」。地方メディアの衰退で地域の情報が報じられない「ニュース砂漠」の特集で取り上げた東部ニュージャージー州の町長、スティーブンソンさん(59)が取材の途中、天皇の退位と即位の話を切り出した。毎朝、自宅に届く地方紙に自分の町のニュースがほとんど載らないとぼやきつつ「今でも隅から隅まで読む」という大の新聞ファン。今月1日に載った天皇代替わりの短い記事も漏らさず読んでいた。

 テレビニュースもチェックするというので、どのメディアをよく見るか尋ねた。所属は野党民主党だけに、トランプ大統領や与党共和党に批判的なメディアの名前を期待したのだが、答えは「最近は米メディアではなく英国のBBCを見ている」。

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 その理由は、トランプ氏を連日取り上げる米メディアの報道姿勢にあるという。

 例えば「反トランプ」色が鮮明なCNNテレビはある日「トランプ氏が(自身をたたえる他人の)ツイッター投稿のリツイート(転載)を連発した」と報じたが、スティーブンソンさんは「それがニュースか? 雇用がどうなるかなど市民が知りたい情報とは違う」と手厳しい。

 一方、「親トランプ」で知られる保守系のFOXニュースでは、出演者がトランプ氏に厳しい意見を述べると、司会者が発言を遮って「彼は選挙で勝って大統領に選ばれた。もうあなたの話は結構」と討論を打ち切るようなことが、たまにある。

 保守層の主張にも一定の理解を示すスティーブンソンさんだが、FOXの報道姿勢にも納得がいかない。「賛否両方の意見が聞きたいのに、ひいきのスポーツチームのようにトランプ氏を応援してばかりで飽き飽きする。だから見ないんだ」

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 私は仕事柄、CNNもFOXもよく見るが、物議を醸す言動が絶えないトランプ氏に対してでも、是々非々の姿勢で報道する記者やキャスターはどちらにもいる。先日も、客観的な報道に定評があるFOXのキャスターが民主党の大統領候補者を番組に招き、討論していた。

 ところがトランプ氏はそのキャスターを強く批判。民主党候補を出演させたのが気に障ったもようで、報道が中立的か否かなどお構いなしだ。国民もトランプ氏を好きか嫌いかでどのメディアを見るか決める傾向を強め、メディアが国民の分断を助長しているとも指摘される。

 私も米メディアの偏向ぶりにはうんざりし、いら立ちを感じることもある。とは言いつつ、自分の書く記事がトランプ氏に批判的な内容に偏って、客観的な視点を欠いてはいないか…。スティーブンソンさんの苦言を聞きながら、ふと考えさせられた。 (田中伸幸)

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