地域課題解決へ事業多彩に 「イノベーションスタジオ福岡」卒業生が報告

西日本新聞 ふくおか版

それぞれの分野で手掛ける新規事業などを発表する「イノベーションスタジオ福岡」の卒業生たち 拡大

それぞれの分野で手掛ける新規事業などを発表する「イノベーションスタジオ福岡」の卒業生たち

 成長著しい福岡市で「イノベーション(技術革新)」を前面にうたった産学官民協働のプロジェクトがあった。「イノベーションスタジオ福岡」。通称イノスタ。健康や防災など生活の中にある課題を発掘し、解決に向けて新たな発想やサービスを考案する事業で、延べ200人以上が参加した。今月、その卒業生が同市で開いた近況報告会を取材した。イノスタでの経験を起業やビジネス拡大に生かす市民イノベーター(作り手)たちからは「福岡をもっと良い地域に」との熱い思いが伝わった。

 イノスタは、福岡都市圏の産学官民でつくる福岡地域戦略推進協議会(同市)が主催し、2014-17年に実施。多様な経歴や能力を持ち、新規事業に意欲がある市民、企業、NPO、大学関係者らが集まった。

 「日常の中のスポーツのデザイン」、高齢化社会などを考える「ライフコースのイノベーション」、防災や災害復興といったテーマを設定。数人のチームで課題を洗い出し、現地調査や専門家へのインタビューなども実施。着想したアイデアを事業化するためのビジネスプランを作成した。

 例えば、防災関係では16年の熊本地震の被災地を調査。災害廃棄物の広域処理のモデルケースづくりや、防災用品の備蓄などを手助けするコミュニティーサイトなどを提案した。

 イノスタの創設担当者で福岡市職員の安川浩平さん(42)は「多様な人たちが交流し、ライフスタイルなどの新しい発想を世界に発信していくという構想だった」と振り返る。

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 報告会は、九州大大橋キャンパス(同市南区)で開かれ、約60人が参加した。

 長廣百合子さん、遥さん夫妻は「産後・育児期の夫婦の課題解決に向けた事業を始めたい」とイノスタに参加。「私たちで未来を創(つく)る」という趣旨で、夫婦を世帯の共同経営者に見立てた「世帯経営」の概念を見いだした。卒業後、産後の夫婦の協力体制づくりに向けた「夫婦会議(夫婦の対話)」の講座やツール開発を行う会社「Logista(ロジスタ)」を設立。子育て、仕事などを夫婦で話し合った内容を書き込む「世帯経営ノート」を発案し、連携協定を締結した宮崎県日南市では母子手帳と一緒に配布されている。

 短大教員で娘に障害がある中村洋子さんは、イノスタでさまざまな立場の人と交流。「誰もが安心して楽しめる社会をつくりたい。不自由さを解決できない社会が障害なんだと気付いた」と語った。現在、講演活動のほか、宗像市で月1回、農家や市民が飲食物を持ち寄って楽しむ地域交流会「バー洋子」を主宰。共鳴した女性が九州各地で同様の「バー」を始めるムーブメントとなっている。

 久保山宏さんは会社を設立、子ども向け遊具を開発した。「大人のソーシャルスキルトレーニングや、小中学生の学びの選択肢などをテーマに活動したい」と今後を見据える。

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 報告会を終え、イノスタのディレクターを務めた田村大さん(48)は「イノスタから出てきた事業は、社会貢献や社会的問題を、ビジネスを通じて解決を目指すソーシャルベンチャーと言える」と指摘。「社会や福岡という街に真摯(しんし)に向き合い、熱い思いを持って何かを変えようと取り組む姿に心を打たれた。輩出された市民イノベーターたちが再会をきっかけに新たなイノベーションをつくりそうだ」と総括した。

 人材の豊富さと、それが掛け合わさったときに生まれる斬新なアイデア。こうした自由で開かれた「場」の一つ一つが、福岡の成長を支えていると実感した。

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