裁判所のミスなのに、なぜ自腹? 「訂正文書」の郵送費請求され…

西日本新聞 社会面

男性から特命取材班に送られてきた督促状や裁判所の「更正決定」など文書の写し(写真の一部を加工しています) 拡大

男性から特命取材班に送られてきた督促状や裁判所の「更正決定」など文書の写し(写真の一部を加工しています)

 「裁判官のミスなのに、書類の郵送費用を訴訟当事者に負担させるのはおかしい」。千葉県の男性(71)から特命取材班に憤りの声が寄せられた。以前、ある民事訴訟の被告として受け取った決定文に誤りがあった、と裁判所から連絡があった。正しい決定文を送り直すとして、郵送費用を請求されたという。どうして? 調べてみると‐。

 男性は家庭上の問題で家族から訴訟を起こされ、千葉家裁で係争中。訴訟の中で相手に文書提出を求めたが拒まれたため、家裁に提出を命じるよう申し立てた。家裁に却下されて東京高裁にも申し立てたが、昨年11月、退ける決定が出た。

 民事訴訟費用法に基づき、訴訟当事者は書類の送達などに必要な費用をあらかじめ裁判所に納めることになっている。裁判が終われば、実際に使った分を除いた金額が返還される。男性も決定文の送付とともに残額の返還を受けたという。

 ところが決定から10日ほどたち、高裁の書記官から「決定に明白な誤りがあり、職権で更正手続きをする」と電話があった。決定内容は変わらないが、根拠とする法律が誤っていたという。文書の郵送料の支払いを求められたため、男性は「ミスをした担当裁判官が支払うべきだ」と抗議。後日「検討したが、ご希望に沿えず、送達費用を国庫で立て替えることとなった」と書かれた事務連絡とともに、訂正された決定文が送られてきた。送達費用は1072円だった。

 民事訴訟法は、判決に誤記など明白な誤りがあるときは申し立てか職権で裁判所が「更正決定」できると定める。では書類の送達費用は誰が負担するのか。

 最高裁事務総局に聞くと「個別の事案についてはお答えできません」。一般論として尋ねると「調べてみます」と1週間待たされた上、説明されたのは民事訴訟費用法の規定だった。原告、被告のいずれかが「更正」を申し立てた場合、その申立人が負担。裁判所が職権で行った場合は原告、被告どちらが払うか「裁判所が定める」という。

 裁判所のミスでも、男性に郵送費用を請求するのは規定上間違ってはいないということになる。

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 他の役所がミスした場合の郵送料の費用負担はどうなっているのか。

 中央官庁の情報公開請求の場合、「ルールはないが、行政機関に問題があって送り返す場合、一般論で機関側が負担すると考えられる」と総務省行政管理局。労働関係の勧告文や通知については、福岡労働局は「規定はないが、通常は労働局側が負担することが多い」という。住民票などの郵送請求については「誤りがある場合は市側が負担する」(福岡市区政課)。

 いずれも役所側が費用負担するとの回答だった。法律に基づくとしても、社会常識に照らすと裁判所の対応は少々不可解だ。

 現職の裁判官に聞くと「誤りが生じない努力をしているが、ミスを根絶するのは難しい。疑問に思うのは分かるが、法律で決まっている以上、理解を求めるしかない」とのことだった。

 男性の元には複数回、高裁から督促状が届いた。延滞金の利率は年5%。男性は「1年支払わなくても利息は50円程度。民間では考えられない“お上意識”を到底許すことはできない」と怒りが収まらない様子。支払いは拒否し続けるという。

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