景気の現状 「緩やかに回復」は本当か

西日本新聞 オピニオン面

 注目されていた5月の月例経済報告が公表された。景気の総括判断は2カ月ぶりに下方修正しつつ、「緩やかに回復している」という根幹部分は、これまで通り維持した。

 月例経済報告は景気についての政府の公式見解である。米中貿易戦争の影響などで既に景気は後退局面に入ったとの見方がある中で、「回復」の文字が残るかどうかが焦点だった。政府が景気悪化を認めれば、10月に予定する消費税率10%への引き上げの先送りや、さらなる景気対策を求める声が強まることも予想されたからだ。

 その意味では、総括判断を引き下げながらも「回復」を残すという、玉虫色の表現となった。3度目の先送りの臆測が消えない消費税増税を巡る議論も、決着は持ち越した。安倍晋三政権の屋台骨である経済政策「アベノミクス」の成否が問われるのを避けたようにも映る。

 というのは、このところ、景気の減速を示す経済指標が目に付くからだ。

 代表例が、景気の現状把握と将来予測のために作成される景気動向指数だ。今月13日に発表された3月の景気動向指数で、景気の基調判断が6年2カ月ぶりに「悪化」に転落した。2008年4月以降、悪化に転落したことが2度あり、いずれの時も、その後に景気後退局面だったと認定されている。

 景気動向指数の基調判断は、鉱工業生産など九つの経済指標の動向から機械的に判定して行われる。一方、月例経済報告はより多くの幅広い経済指標を参考に、背景となる情報の収集と分析、企業へのヒアリングなどを加味し総合的に判断している。それらは「性質が異なる」(内閣府)とはいえ、景気の現状判断がこうも食い違えば、「緩やかに回復」というのは本当なのかと心配になる。国民に向けた丁寧な説明が必要だろう。

 これから先の景気動向に懸念材料が多いのは確かだ。中国経済の減速を受け、電子部品などの減産や設備投資を先送りする動きが広がってきた。米国が中国向けに第4弾となる追加制裁を準備するなど、先行き不透明感が一段と強まっている。

 茂木敏充経済再生担当相は、失業率や有効求人倍率は改善傾向が続き、企業収益は引き続き高い水準にあるとして「内需を支えるファンダメンタルズ(基礎的条件)はしっかりしている」と繰り返すが、決して楽観できる状況ではない。

 米中の制裁合戦が長期化すれば、好調な米国経済の足を引っ張る懸念もある。日本経済に直接的にも間接的にも悪影響が広がらないか、これまで以上に細心の注意が必要だ。

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