高血圧、どう改善図る? 福岡県久留米市でフォーラム

西日本新聞 医療面

生活習慣の課題について意見を交わす青森、沖縄、長野各県の保健師ら=11日、福岡県久留米市 拡大

生活習慣の課題について意見を交わす青森、沖縄、長野各県の保健師ら=11日、福岡県久留米市

北九州市の学校給食での取り組みも発表された=11日、福岡県久留米市

 ●平均寿命男女ワースト・青森塩分多すぎ 男性日本一から36位に・沖縄野菜足りず

 脳や心臓の疾患リスクを招く高血圧。第8回臨床高血圧フォーラム(日本高血圧学会主催)と第55回日本循環器病予防学会学術集会が11-12日、福岡県久留米市であり、健康寿命の延伸に欠かせない高血圧の改善を呼び掛けるシンポジウムなどが開かれた。健康長寿の代名詞だった沖縄県や長寿日本一となった長野県の現状、北九州市などの減塩の取り組みが報告された。

 シンポジウム「データからみえる循環器疾患の実態」では、2015年の平均寿命が男女とも全国で最も短かった青森県と、男性の平均寿命が1985年の1位から36位に転落した沖縄県の保健師らが、厚生労働省の統計などを基に生活習慣の課題を説明。平均寿命が男性2位、女性1位だった長野県の担当者は長寿の背景を語った。

 青森県弘前市国保年金課の三上淨子さんによると、15年に青森県民のうち最低血圧が90以上だった割合は全国で2番目に高く、脳梗塞による死亡率は男女とも全国最高だったという。

 三上さんは、その背景に、食塩消費量全国1位の食生活があると指摘。野菜や魚を漬物などの保存食にする文化が根付いているほか、カップ麺も消費量全国1位で、汁をスープ代わりに飲む習慣のある人も多いという。三上さんは「冬場に外を出歩かない生活習慣もある」と問題提起した。

 沖縄県国民健康保険団体連合会の保健師金城由美子さんによると、沖縄では特に40代前後の男性の死亡原因のうち、脳内出血と虚血性心疾患の割合が全国で上位。いずれも高血圧が要因とされる疾患だ。また、県民の体格指数(BMI)が25以上の「肥満」の割合も全国1位だった。

 戦前は野菜を多く食べる生活だったが、米軍統治を経てファストフードが普及し、野菜摂取量は全国ワーストに。朝食を取らない成人の割合も全国最多となっており、金城さんは「沖縄には“終電”の概念がなく、未明まで飲み会をする人も多い」と話した。

 一方、長野県健康増進課の田中ゆう子さんは、長寿の背景について「病院や保健所、自治体による活動の積み重ねで健康への意識が浸透した」と分析。1955年ごろから、へき地での巡回診療や健康教室に力を入れ、冬に起こりやすい脳卒中予防のため、住居を暖める「一部屋暖房運動」も推進されてきたという。

 同県では、野菜の摂取量が全国平均を大きく上回り、16年度の特定健診の受診率は全国6位だった。

 座長を務めた東北大名誉教授の伊藤貞嘉医師は「高血圧は簡単に診断でき、優れた薬が開発されているにもかかわらず、半数ほどしか治療が行われていない。一人一人が健康に対する正しい知識を持つことが重要だ」と指摘した。

 減塩、北九州市の工夫も紹介

 高血圧の改善に向け、医療関係者や行政など多職種が連携して減塩を推進する活動も紹介された。

 岐阜県下呂市健康医療課の森本千恵さんは、市長が「減塩」を公約に掲げたことから始まった行政主導の取り組みを発表。地元の商工会やJAなどと連携して、調味料などの減塩商品を購入しやすい環境を整えたり、塩分計を配ったりした。同時に、健康診断で高血圧や肥満などの傾向がある人を個別に指導する特定保健指導率が90%を超えるなど、高リスクの市民への働き掛けにも力を入れた。

 この結果、高血圧や脳疾患の受療率、幼児の尿中塩分濃度などが少しずつ低下し、取り組みは全国的に注目されるようになった。森本さんは「一般市民とハイリスク者双方への取り組みが重要」と呼び掛けた。

 北九州市の学校給食での試みも報告された。同市教育委員会学校保健課の前田としえさんによると、中学校の完全給食を始めた2009年から、小・中・特別支援学校計199校で統一献立にして減塩に取り組む。文部科学省の基準値(1食当たり小学校2グラム未満、中学校2.5グラム未満)に収まるよう、薄味でだしや素材の味を生かすなどの工夫を凝らす。

 当初は「味が薄い」の理由で食べ残しが目立ったが、少しずつ改善。保護者にも「薄味でもおいしい」「家での味付けは濃かった」などの反応が見られるようになったという。

 このほか、福岡県筑後市は、日本高血圧学会や日本糖尿病学会など11団体が、塩分やカロリー、野菜の量などが配慮された「健康な食事」として認証する「スマートミール」の普及活動を紹介した。

 座長を務めた製鉄記念八幡病院の土橋卓也さんは「減塩の取り組みは年々広がり、進んでいる。今後は血圧を測ったことがない人をゼロにして、高血圧改善の意識を浸透させたい」と締めくくった。

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