「自分の『普通』嗤われるの嫌」命絶った20歳の女性 届かなかった支援、母の苦悩

西日本新聞 社会面

女性が残した遺書。生前、周囲から「普通じゃない」「変わってる」「常識外れ」などと言われ続けたといい、「笑顔で受け流すことに疲れた」と漏らしていたという(写真の一部を加工しています) 拡大

女性が残した遺書。生前、周囲から「普通じゃない」「変わってる」「常識外れ」などと言われ続けたといい、「笑顔で受け流すことに疲れた」と漏らしていたという(写真の一部を加工しています)

1月に自ら命を絶った女性が残した絵やスケッチブックを眺める母親。本棚の本や置物から絵は女性の部屋を描いたとみられ、外から押し寄せてくるカッターナイフ(苦痛)から女の子が逃げようとしているように見える=福岡市

 クラスに一人はいた「変わった子」が、「発達障害」として広く認知されるようになったのは、平成に入ってから。福祉の谷間に取り残されていた障害を早期発見し、療育につなげるため、2004年に発達障害者支援法が成立。学校や職場などが障害に対し「合理的配慮」を行うことを義務づける法律も16年に施行された。社会的資源の整備が進みつつあるが、残された課題も多い。

 福岡県の20代男性は人間関係を築くのが苦手で、トラブルが絶えなかったという。幼児期、保育士が親に「発達障害では」と伝えたことがあったが、父親は医療機関を頼らなかった。家庭や学校で問題行動を繰り返し、親からは繰り返し殴られた。社会に出てからも対人関係につまずき、水筒に入れた焼酎を職場で隠れて飲んだ。

 窃盗事件を起こして服役し、出所後に福祉につながった。「広汎性発達障害」の診断を受けたのは20歳を過ぎてからだ。人と違うことに劣等感を抱え、何度も自傷行為をしてきた男性は「障害と分かって、ほっとした」。男性の支援者は「もっと早く気付いてあげていたら、つらい思いをしなくて済んだ」と話す。

 厚生労働省の乳幼児を対象とする研究では、顕著な発達障害の特性を示す割合は推計で1・6%。これに対し、総務省が17年に公表した抽出調査では、1歳半児と3歳児健診でこの割合を下回る自治体が複数あった。就学前健診では、早期発見につながる発達検査や行動観察などを行っていない教育委員会が3割ほどあり、発達障害が疑われる子どもが見逃されている恐れがある。

 医療機関に通院や入院をしている発達障害の患者の総数は、02年度の3万5千人から、17年度は23万3千人と7倍近くに増えた。障害への認知が進み、保育士ら子どもに関わる職種で「早期発見」の意識が高まったことが大きいという。

 一方で、全国的に専門病院の「初診待ち」の長期化が問題となっている。総務省の調査では、27病院のうち14病院で3カ月以上の待ちが生じており、最長で10カ月待ちという病院もあった。

 1月に自ら命を絶った福岡市の女性(20)も医療機関を何度も頼ったが、予約が殺到していることなどを理由に断られている。福岡県内の発達障害者支援センターの担当者は「専門病院の初診待ちに加え、診断後に個別に療育できる機関の不足も深刻」と漏らす。

 福岡市発達障がい者支援協議会会長の野口幸弘・西南学院大元教授(特別支援教育)は、早期発見・早期療育の重要性を指摘した上で、「わずかな発達の遅れでも、発達障害を指摘する支援者が増えたように感じる。レッテル貼りだけが進み、支援が追いつかなければ本人や家族が孤立しかねない」と懸念する。

 野口氏は「多様性に目が向けられる社会にはなったが、違いを許容できる社会にはなっていない。支援に関わる者は、社会に適応しようと頑張ってきた本人や家族を褒めてあげて、地域の中で共生できる環境を整えることが求められている」と話した。

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