「性暴力の実態知って」 花を持ちデモ 相次ぐ無罪判決に疑問の声 福岡でも抗議行動 次回は6月11日

西日本新聞 くらし面

フラワーデモでスピーチに聞き入る参加者たち 拡大

フラワーデモでスピーチに聞き入る参加者たち

 3月に性暴力を巡る裁判で無罪判決が相次いだことを受けて今月11日、福岡・東京・大阪の3都市で抗議するデモがあった。福岡では約50人が参加し、司法判断や法制度に疑問の声を上げ、性暴力のない社会の実現を訴えた。

 土曜午後7時。にぎわう福岡市・天神の警固公園の一角に、花を携えた人が集まった。被害者への連帯や共感を花に込めた「フラワーデモ」。作家の北原みのりさんらが呼び掛け、4月に東京で開催。その様子をインターネット上で知った人を中心に賛同の声が広がり、福岡でも企画された。

 「#Me Too」「#With You」と書いた物を手にしている。スピーチをする人は他の参加者に向き合い、自身の経験や怒り、悔しさを口にする。話が終わると次の話し手が前に出て、語り始めた。

 福岡の呼び掛け人の一人、臨床心理士の黒瀬まり子さん=福岡市東区=は「日本で暮らしていると、性暴力に対してすごく優しい国だなと思う」。相談を受けた経験もあり「ここに来たいけど来られない被害者もいる」とし、性被害を語る難しさを訴えた上で「声を上げ続けたら何か変わるんじゃないか」と結んだ。

 ある参加者は「何となく聞いている人もいるでしょう。でも人ごとではない。家族やパートナーが性暴力を受けたらどう思いますか」と公園を行き交う人に問い掛けた。「小学生のとき、性被害に遭ったけど親にも言えなかった」と打ち明ける人もいた。

 「男性や性的少数者の人も被害に遭う」「時間がたってから被害を思い出すこともある。時効は撤廃して」という声もあった。注文していない下着などが届く嫌がらせを受けた北九州市議の村上聡子さん(53)は「被害者が声を上げやすい社会にすることと、加害者を生まない教育がともに必要だ」と強調した。

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 性暴力を巡る無罪判決は3月、全国の地裁で4件あった。泥酔した女性に乱暴したことについては「許容していると男性が誤信し得る状況だった」と、男性の「故意」が認められなかった。実父からの性交については「意に反するもの」としたが「抵抗不能の状態だったとは認定できない」と罪には問わなかった。こうした司法の現実に、参加者は「性被害の実態に合っていない」と口をそろえる。無力感や怒り、疑問の声が沸き上がっている。

 相次ぐ無罪判決は、性暴力被害者やその支援の現場にも影響を与えている。

 デモに参加した「性暴力被害者支援センター・ふくおか」センター長の浦尚子さん(47)は「支援を通して一番伝えたいのが『あなたは悪くない』ということ。こういう判決が続くと『やっぱり自分が悪いのか』と感じてしまう被害者もいる。相談すらためらう人もいるだろう」と懸念する。

 公園には足を止めて耳を傾ける人もいた。浦さんは、被害が潜在化している原因は、被害者に落ち度があったとする「レイプ神話」がはびこる社会にこそあると指摘する。「フラワーデモを性暴力被害者が声を上げやすい環境づくりのきっかけにしたい」

 次回は6月11日午後7時から、福岡市・天神の警固公園で開催予定。

 被害者団体、刑法見直し訴え 「暴行・脅迫」要件の撤廃を 法務省に要望書

 「裁判で罪が認められることは、被害者が回復するための重要なピースの一つ」(性暴力被害者の支援者)という。だが、司法の場で救われない場合があるのも事実だ。相次いだ無罪判決は全国的な議論を呼び、刑法の見直しを求める動きも出ている。

 性暴力の被害者らでつくる一般社団法人「Spring」(東京)は13日、法務省に刑法見直しに関する要望書を提出した。柱の一つが「暴行・脅迫」「抗拒不能」という要件の撤廃を含めた見直しだ。

 今回の無罪判決でも問われた強制性交罪や準強制性交罪が成立するには、「抵抗を著しく困難にする程度の暴行または脅迫を用いること」や「被害者が抵抗できないこと(抗拒不能)に乗じて行為に及ぶこと」などが必要とされている。2017年の刑法改正前にも議論されたが、冤罪(えんざい)に対する懸念などもあり撤廃には慎重な見方が根強かった。

 要望書では「抵抗は恐怖のときの反応として必ずしも一般的でない」「暴行や脅迫がなくても抵抗できなくなり、性犯罪が成立することは心理学的にも証明されている」と指摘。代表理事の山本潤さんは「一連の判決は、被害当事者として納得できず悔しい。被害の実態に基づく条文規定が大切だ」と訴える。

 同意のない性交を性犯罪とする「不同意性交等罪」の創設や、2020年をめどとした刑法見直しの実現なども要望。最高裁にも提出し、性暴力の実態や精神医学の知見を踏まえた研修などを求めた。

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