日米貿易交渉 参院選ありきは本末転倒

西日本新聞 オピニオン面

 令和初の国賓として招かれたトランプ米大統領が4日間の訪日日程を終えた。貿易交渉について首脳会談では、早期妥結に向けて閣僚レベルの協議を加速させることで一致した。

 茂木敏充経済再生担当相とライトハイザー米通商代表部(USTR)代表による一連の交渉は、双方の主張の隔たりが埋まっておらず、妥結は7月の参院選の後に先送りすることで折り合ったというところだろう。

 安倍晋三首相は、交渉の大枠決着を「参院選より後にしたい」とトランプ氏に繰り返し伝えていたという。滞在中に性急な決着を迫られることもなく、日本の関係者はひとまず安堵(あんど)しているようだ。

 焦点の一つは、米国が求める牛肉や小麦など農産品の市場開放だ。農業分野で米国に大幅譲歩すれば参院選に影響しかねない。環太平洋連携協定(TPP)の承認案が国会に提出された直後の前回参院選では、農業票の多い東北地方で自民党候補が落選した。その記憶が首相の念頭にあるのかもしれない。

 確かに交渉は容易ではあるまい。トランプ氏は滞在中、貿易の不均衡是正に強い意欲を示し、米国産が不利となっている農産物の市場開放を迫った。ツイッターに農業や牛肉の交渉が進展していると書き込んだ。首脳会談の冒頭で「8月に大きな発表ができるだろう」と期限を明示したり、記者会見で「TPPに米国は全く縛られない」と述べたりして、関税は引き下げるとしてもTPP水準が限度とする日本に揺さぶりをかけた。

 トランプ氏は来年の大統領選で再選を目指している。中国との貿易交渉がまとまらず制裁合戦に突入した中、トランプ氏や共和党の支持基盤と重なる米国の農家向けに成果を示したい。選挙をにらみながら交渉しているのは日本と同じだ。ただ、選挙を意識するあまり、国民不在の交渉となっては本末転倒だ。

 日米貿易交渉で扱われるのは、農業や自動車など国民の暮らしや経済活動に深く関わる分野が中心だ。特に自動車や自動車部品の分野では、米国が高関税措置をちらつかせ、日本に自主的に輸出枠を設けるよう圧力をかけてくる可能性もある。

 日本は、米国の「自動車輸入が国家安全保障上の脅威に当たる」といった主張を受け入れるわけにはいかない。

 日本が農業分野の関税引き下げを認めながら、自動車や工業品の分野で米国の関税引き下げを勝ち取れないようでは、首相が言うウィンウィン(相互利益)の関係には程遠い。

 国民にとって、決着が参院選の前か後かは問題ではない。その中身こそが重要だ。

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