民生委員、制度をどう維持? 増えるばかりの業務量 新たななり手確保困難 負担軽減へ、地域が助ける取り組みも 

西日本新聞 くらし面

高齢者宅を訪れた福岡大の学生2人(左)。お気に入りの鉢植えの話に聞き入った 拡大

高齢者宅を訪れた福岡大の学生2人(左)。お気に入りの鉢植えの話に聞き入った

 住民の生活相談に応じる民生委員が12月、3年ぶりに全国一斉に改選される。困ったときの地域の「見守り役」だが、高齢者の孤立や詐欺被害の防止など業務が増える一方、担い手は不足している。平均年齢は66・1歳(2016年度)と高く、職場の定年延長などにより高齢者の就業機会が広がれば、なり手はさらに減りかねない。識者は「地域で役割を分担する必要がある」と指摘する。

 田畑が広がる福岡県中部の市。ここで民生委員を務める60代男性は、担当地区で女性の孤立死を経験した。「地域でつながりなく生きていたのに、なぜ気付けなかったか」と、面会したことがなかった自分を責めた。

 男性は1人で300世帯以上を受け持つ。単身高齢者や生活困窮者、全盲の人がいる約30世帯は常に見守りが必要という。訪問して緊急連絡先やかかりつけ医などを聞き、台帳に書くが、玄関のドアを数センチしか開けてくれない人もいる。

 やりがいはある。以前、「ごみ屋敷」だった80代男性宅を住民と片付け、介護保険サービスを利用できるよう手配した。「救うことができた。やっていてよかった」と思えた。

 それでも、「1人で見る世帯が多すぎる」。業務に行き詰まりを感じている。

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 民生委員は、市町村の推薦で国から委嘱される非常勤の地方公務員。高齢者や障害者世帯などの生活相談に乗り、福祉サービスに橋渡しする。任期は3年で、交通費などを除き報酬はない。子育て相談に応じる児童委員も兼ねる。

 担い手不足は深刻さを増している。16年度の改選時は、定数23万8352人に対し、欠員8811人(充足率96・3%)。数の上では分かりにくいが、再任は68・4%に上り、新たななり手の確保が難しい。住民の抱える問題が複雑になり、業務が増えているためとみられる。

 全国民生委員児童委員連合会(東京)が16年度、民生委員約20万人から回答を得た調査では、家族や地域と関係の薄い「社会的孤立」に、4人に1人が対応していた。認知症や引きこもりなどの支援も多い。

 一方、誰がどこで、どんな問題を抱えているかは、個人情報保護法で自治体から十分知らされていない。

 300世帯以上を担う男性の場合、市からの情報は単身高齢者と高齢の夫婦、生活保護受給者の住所と氏名のみ。「支援すべき人を探すのが難しい。どこに聞いても個人情報の壁に打ちのめされる」とこぼす。

 民生委員は本来、守秘義務が課せられ、職務上は同法の規制を受けない。市町村や事業所から、本人の同意なしに個人情報を得ることを、国は認めている。

 大分県中津市や東京都中野区は、福祉サービスの対象となりうる高齢者などの住所、氏名、介護度、障害の程度などを知らせている。中野区は妊産婦や子どもの養育が困難な家庭、低所得者世帯の情報も民生委員と共有。トラブル防止のため情報を出し渋る自治体が目立つ中、「災害時などに活動の支障になるため」(中津市)という。

 厚生労働省によると、自治体から「どこまで提供していいか」と照会もある。昨年8月、民生委員に情報が行き届くよう全国の自治体にあらためて周知した。

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 担い手がさらに不足しかねない動きもある。国が進める高齢者の就業拡大だ。

 企業は法改正で13年度から、希望者全員を65歳まで雇うよう義務付けられた。政府は70歳までにすることを努力義務とする方針。サラリーマンが60歳で定年退職した後、民生委員を長年担っていた形が崩れるかもしれない。

 増える業務と、減る後継者。厳しい現場を地域が助ける例もある。福岡市では、福岡大医学部看護学科の学生が09年度から、1人暮らしの高齢者宅を訪れ、コミュニケーションの練習を兼ねて見守りを続ける。

 学生は高齢者に異変があると、すぐ民生委員に連絡。「知らない人が来て銀行に連れて行かれた」「具合が悪い」などと連絡が入り、対応できた。18日、学生に同行した地元校区の民生委員児童委員協議会の谷村幸子会長は「1人では目が届かないことがあり、学生の見守りは安心感がある」と目を細めた。

 民生委員制度をどう維持するか。文京学院大の中島修准教授(地域福祉論)は、民生委員がチームになり担当地区をカバーし合う▽改選は推薦方式に加え、公募制など地域に応じた多様な方法を検討▽研修や会議を土日や夜にし、仕事と両立できるようにする‐などを挙げる。その上で「民生委員の業務は『買い物難民』や、運転免許を返納した高齢者の支援にまで広がっている。自治会やNPO、地域貢献が責務になった社会福祉法人と連携し、業務の分担を考える必要がある」と語る。

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