【動画あり】吉本興業のソーシャルビジネス始動 全国の移住芸人、各地の課題解決へ事業化 福岡からは畳支援の事例報告

西日本新聞 夕刊

 吉本興業(東京)による、事業を通じて社会課題の解決を図る「ソーシャルビジネス」が動きだした。今月中旬、吉本興業が都内で開いた記者会見に九州を含む全国各地の吉本芸人らが集結し、それぞれ各地で直面する地域課題や、解決に向け着手した事業の進み具合を報告。課題の解決を目指し、ちょっぴり笑いも交えた“よしもと流”ソーシャルビジネスを紹介した。

 吉本興業は昨春、ソーシャルビジネスの提唱者とされ、ノーベル平和賞を受賞したバングラデシュの経済学者ムハマド・ユヌス氏と提携合意し、ソーシャルビジネスへの進出を表明。両者で合弁会社「ユヌス・よしもとソーシャルアクション」(yySA、泉正隆社長)を設立、事業化を進めてきた。提携は同氏と交流のある九州大が仲介した。

 事業の最前線に立つのは47都道府県に派遣され芸能活動を続ける「住みます芸人」たちだ。吉本興業によると、2011年の住みますプロジェクト始動後、芸人らは各地で観光PRなどを手伝う中で、少子高齢化や農業の担い手不足などさまざまな課題に直面。こうした動きを受けて、吉本興業はソーシャルビジネスに関心を強め、yySAによる事業化で地域に成果を還元することにした。

 報告会には事業が動きだしたという24道府県の芸人各1組計約40人が参加し、福岡を含む6地域の芸人が代表で登壇。福岡県住みます芸人「畳屋ラッパー Mc Tatami」こと徳田直弘さん(28)=同県朝倉市=は「『畳文化』存続に向けたイグサ農家V字回復事業」と題して発表し、住宅の洋風化などで畳販売が伸び悩む中、原料のイグサの産地(熊本県八代地域)を支援するため、食用イグサを使った「畳あめ」を商品化する事業を報告した。

 代表報告はこのほか、高齢化が進む山間部で野菜詰め放題イベント(山梨)▽トロール網に掛かった深海魚を食材に活用(静岡)などの事業を紹介。九州では「ユズ農家の担い手不足を特製ゆずこしょう開発で解消」(宮崎)も披露された。

 発表時間は6地域が1組3分で、18地域は「一言」ずつ。途中で自前のギャグを披露する芸人もいたが、爆笑には至らず、終始、発表に集中していた様子。会場にはベテラン漫才師西川きよしさんが駆け付け「みんないいことをやっているけど、笑いも忘れないでね」と注文。後輩たちの健闘を願い「エイエイオー!」と気勢を上げた。

 報告会には、yySA設立に協力した岡田昌治九大特任教授も参加し「日本にソーシャルビジネスを根付かせる貴重な一歩になる」と評価。その上で、ユヌス氏のメッセージビデオを上映し、「長い旅の始まり。目的達成に向けて行動しましょう」との肉声を伝えた。

◆素顔は老舗畳店4代目 福岡県住みます芸人・徳田直弘さん(28) 豪雨被害「地元に元気を」

 福岡県住みます芸人「畳屋ラッパー Mc Tatami」こと徳田直弘さん(28)の素顔は、同県朝倉市で100年以上続く老舗畳店の4代目店主。畳店を営む傍ら福岡吉本所属のミュージシャンとして活動するタレントで、トレードマークは「畳」の刺しゅう入りの野球帽と畳表のネクタイだ。

 畳の原料、イグサの国内主力産地は熊本県八代地域。「国内全体の97%を占めるが、生産農家は平成のうちに10分の1に激減した。原因は住宅の洋風化。このままでは畳文化が廃れる」

 報告会では産地の窮状を訴え、「畳あめ」の商品化は産地振興の一助として掲げた。「食物繊維はキャベツの約40倍。栄養価の高い健康食品です」と売り込み、おもむろにこんなパフォーマンスを披露した。

 「俺は畳屋生まれ、フローリング育ち…畳剥がされリノベーション/だから起こす畳ノベーション/ここがスタート、みんなカモン!」-。少し自虐的な歌詞も交えて歌う自作の「畳ラップ」。業界の厳しい現状に触れるが、聴く側は不思議とポジティブな気分に。「暮らしに安らぎを与え、茶道や柔道などでは神聖な場にもなる畳。そんな伝統文化が見直される時代は必ず訪れる」と言い切る。

 地元・朝倉は一昨年7月の九州豪雨で甚大な被害が出た被災地。死者・不明者は35人に上り、復旧、復興は今なお道半ば。「朝倉を地元から元気づけるのも僕の挑戦です」。野球帽の後ろに縫い込んだ朝倉の市章にはそんな思いを込めている。

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