笑顔のためライダー変身 事件や虐待に心痛めショーや慰問

西日本新聞 社会面

 仮面ライダーがいる‐。長崎県佐世保市でうわさや目撃情報を聞き付けた。接触すると、正体を明かさないことを条件に会ってくれた。本物そっくりに飾ったバイクで街を駆け、ボランティアでショーに出演する。すべては子どもたちの笑顔のため。正義の味方を突き動かすのは、地元で起きた未成年による悲しい事件、後を絶たない児童虐待への思いだった。

 佐世保の仮面ライダーの素顔は50代の優しげなイケメン。身長180センチ近い会社経営者だ。自宅倉庫はライダーのコスチュームがいっぱい。全身を包むスーツ、手袋、ブーツは手作り。マスクは市販のヘルメットを加工してバイクに乗れるようにした。

 「変身」のきっかけはつらい出来事だった。

 2004年の小6同級生殺害事件、14年の高1同級生殺害事件。佐世保の街を揺るがす事件にショックを受けた。高1事件では関係者に知り合いがいた。

 「事件の真相は分からない。僕たちは昭和の道徳教育を受け、人の痛みを知っていたつもりだったが」。その後も深刻な悩みを抱える子が絶えない。少しでも笑顔になってほしい‐。仮面ライダーは2年前から街に出るようになった。

 今年、千葉県の小4女児が虐待死した事件にも心を痛めた。児童虐待防止を訴えるオレンジリボン運動に参加し、腕にリボンを着けてショーに出る。その意味をくみ取ってくれたのだろう。仮面ライダーの著作権を持つ映画配給会社はビジネス利用しないことを条件に活動を容認してくれた。

 佐世保市や近郊の仮面ライダーショー、施設慰問が主な活躍の場だ。熱演を喜んでくれるのは子どもだけではない。あるイベントでは車椅子のおばあちゃんが手を握って離さなかった。

 「酸素マスクをしたまま笑ってくれた。ライダーをやって良かった」

 仮面ライダーシリーズは初放映から50年近くたった今も子どもたちを引きつけてやまない。幼少期、地元の動物園で見たライダーショーで、一緒に記念写真に納まった。ライダーは何も言わなかったが、横にいるだけで勇気が湧いた。

 次は自分の番だ。正義の味方は街を駆ける。子どもたちのために。

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