障害児者と高齢者広がる交流 「共生」福祉施設、 久留米16事業所に

西日本新聞 筑後版

玉入れで集まった玉を利用者と一緒に数える海希君(右) 拡大

玉入れで集まった玉を利用者と一緒に数える海希君(右)

共生型デイサービス「夢叶う」(久留米市大善寺) 共生サービスで受け入れる対象者のイメージ

 高齢者や障害児者が同じ事業所でデイサービスを受ける「共生サービス」が、全国に広がっている。利用者にどんなメリットがあり、どんな課題があるのか。先進地の一つである久留米市で、現状を探った。

 「今日は玉入れをします! ぼくがかごを持って歩くから玉を入れてくださーい!」

 5月下旬、共生サービスに取り組む事業所「夢叶(かな)う」(久留米市大善寺)の玄関を開くと、子どもの元気な声と、高齢者の笑い声が聞こえた。この日は筑後市から通う小学4年の冨重海希(かいき)君(9)の週2度の利用日。海希君が持つかごに、高齢者7人が童心に返ったように玉を投げた。利用者の女性(89)は「家の近所にも子どもがおらず、海希くんが来ると元気がでる。部屋の雰囲気がぱっと明るくなる」と笑った。

 海希君は、2歳4カ月で知能の発達に遅れがあると診断された。母麻記子さん(44)は「会話が苦手で、うまく言葉を選べないことで友達とケンカになることも。でも話す事や人の前に立つことは大好きなので、ここでは居場所を見つけたようで、いきいきとしている」と話した。

 利用者の食事の用意やお菓子作りも積極的に協力し、家でも手伝いをするようになったという。事業所の内藤弥也子さん(37)は「認知症の利用者も海希君に宿題やかるたを教えたり、おとなしい人がよく笑うようになったり。海希くんも悪いことをすると叱られるし、昔の大家族のような雰囲気です」と話す。

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 共生サービスは1993年、富山市の看護師3人が要介護者も障害者も利用できる民間のデイサービス施設を立ち上げたのが始まり。「富山型デイサービス」として次第に広まった。久留米市も事業所の要望があったことから、介護保険事業所で障害児者を受け入れられる「地域密着共生型福祉特区」に申請。2007年、富山市に次ぐ全国2カ所目に選ばれた。久留米市で共生サービスを提供する事業所は現在16に上る。

 ただ、施設数は伸び悩む。障害や介護の程度に合わせた専門的なケアが難しいとの懸念があるからだ。「障害児者が利用している別の施設の職員に助言をもらったり、相談したりしている」と工夫する事業所もあるが、人手不足などから新たな態勢づくりや自治体への申請に手間をかける余裕もなく、二の足を踏む事業所が多いのが現状だ。

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 一方、こうした共生の取り組みを自治体の実施判断任せではなく全国に広めようと、国は昨年、介護保険法を改正し「共生型サービス」を導入した。障害者が高齢になっても使い慣れた施設に通えるよう環境整備することや、不足する福祉人材の相互活用が狙いで、「夢叶う」もそうした施設の一つだ。これまでの介護保険事業所が障害児者を受け入れるケースに加え、障害者福祉事業所が要介護者を既存の職員や設備で受け入れることが可能になった。事業所への報酬が加算されるケースもあるといい、普及が期待される。

 市は今後、事業所向けの施設視察や技術支援を検討していくという。久留米市介護保険課の柴尾晴信課長は「境遇の異なる人が集まることで自然と役割が生まれ、それが生きがいにつながることもある。共生サービスが利用者の選択肢の一つとして広がればいい」と期待している。

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