先輩の遺作、高校生が解読 育徳館高 プロレタリア作家・葉山嘉樹

西日本新聞 社会面

葉山の未発表作を解読した育徳館高文芸部と小正路淑泰校長(後列右)たち 拡大

葉山の未発表作を解読した育徳館高文芸部と小正路淑泰校長(後列右)たち

プロレタリア作家の葉山嘉樹 葉山の未発表作の自筆原稿(みやこ町歴史民俗博物館所蔵)

 福岡県みやこ町出身のプロレタリア作家、葉山嘉樹(1894~1945)が1929年に書いた未発表作「中学校事件」の自筆原稿を、葉山の母校・旧制豊津中の流れをくむ育徳館高(同町)の文芸部員が読み解き、活字化した。研究者ではなく、作者の後輩となる高校生が解読する異例の形で未発表作に90年ぶりに光が当たった。

 作品は、葉山が豊津中時代の1911年に体験したとみられる「同盟休校」がテーマ。学校で「社会科学研究会」を主宰した英語教諭の転任問題を巡り、転任反対の生徒たちが学校と対抗する内容だ。葉山の顕彰に取り組む小正路淑泰(こしょうじとしやす)校長(57)によると、同盟休校は校史で確認できないが、5年生と葉山ら4年生のトラブルが原因となった休校は実際にあったという。

 原稿は、東京の古書店の目録などでその存在を知った小正路校長が町歴史民俗博物館に情報提供し、町が2012年5月に購入していた。200字詰め原稿用紙68枚で、筆跡から葉山の作と確認された。掲載予定だった「夕刊大阪新聞」(大阪市、廃刊)への葉山の書簡もあり、その書簡から、作品が当時の治安関連の法律に抵触する可能性があるとして、新聞社が掲載を見送ったことも分かった。

 小正路校長は昨年5月ごろ、文芸部に活字化を提案。11人の部員は夏休み、計8章の作品を章ごとに2~3人で分担して解読。約2カ月かけて、電子辞書などを参照しながら旧字体や旧仮名遣いの多い原稿を現代文に直し、3月刊行の同高文芸誌「赤土」に発表した。部長の井上晶さん(18)=3年=は「活字化できてうれしいし、やり遂げて満足」と語り、小正路校長は「難しい解読に挑戦し、葉山の作を世に出した生徒をたたえたい」と話す。学会誌からの発表の依頼もあるという。

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 葉山嘉樹(はやま・よしき) 福岡県豊津村(現福岡県みやこ町)出身。旧制豊津中から早稲田大予科に進むが除籍され、セメント工場などに勤務。一時投獄されるも、「淫売婦(いんばいふ)」や「海に生くる人々」などのプロレタリア文学を残した。「蟹工船(かにこうせん)」で知られる作家小林多喜二らに大きな影響を与えた。

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