【政治考】NHKと政権の“距離感”に疑問

西日本新聞 総合面

 学校法人「森友学園」への国有地売却問題で、一つの司法判断が出た。大阪地裁は5月30日、情報公開請求のあった売却価格を非開示にしたのは違法だとして、国に賠償を命じた。安倍昭恵首相夫人らの関与が取り沙汰され、財務省が公文書を改ざんしてまで情報を隠した問題である。

 ところがNHKのニュースを見て驚いた。「値引き理由不開示は『適法』」との見出しで、国が「勝訴」したかのような報道ぶりだったからだ。判決は売却価格の非開示を違法とする一方、値引き理由の非開示については適法と判断。NHKはそこに焦点を当て、国に賠償が命じられたことは短く付け加えていた。

 かつて司法を担当していたことがある。国への損害賠償請求はハードルが高く、認められるケースは多くない。それだけに、判決で賠償が認められれば大きなニュースになる。31日の全国紙(東京版)を見ても、今回の判決についての記事は、全紙が「賠償命令」を見出しに取っている。

 ニュースの価値判断は多様だとはいえ、国の違法行為が認定されたことを脇に置く発想は理解しがたい。元司法担当だから余計にそう思うのかもしれないが、今回のNHKの報道は「政権寄り」に思える。

 NHKと安倍政権との関係に、疑いの目を向ける人は少なくない。国会では「官邸と太いパイプがある」とされる人物が専務理事に復帰した4月の人事について、野党が「官邸の意向があったのではないか」と問いただしている。

 元NHK記者の相澤冬樹氏は著書「安倍官邸VSNHK」で、森友学園問題を報道する際に上層部から「圧力」があったと書いている。これについても野党は追及。NHKはいずれも否定している。

 NHK幹部は国会や記者会見で「放送の自主自律を堅持する」と繰り返している。ならば主要メディアと明らかに異なる今回の判決の報道も、司法担当記者の自主的な判断だったのだろうか。政権との「距離感」にどうしても疑念が拭えない。

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