大人からの「部活」 小川 祥平

西日本新聞 オピニオン面

 中学、高校、大学を通じて部活動というものに縁がなかった。そんな私が最近考えさせられている。人生の先輩たちから「部活」という言葉を立て続けに聞いたからだ。

 その1人が劇作家、俳優の松尾スズキさん(56)=北九州市出身。主宰する「大人計画」は宮藤官九郎さんらを擁し、千人規模の劇場を連日埋める人気劇団。その松尾さんが「部活をやりたい」と、言葉通り「東京成人演劇部」を立ち上げた。7月31日と8月1日には約120席の北九州芸術劇場小劇場で2人芝居「命、ギガ長ス」をやる。

 九州産業大時代に所属した演劇研究会を念頭に置く。授業の合間に部室に入り浸り、置いてあった戯曲を読むうちに演劇の面白さに目覚めた。経済的な責任とは無縁で、純粋な表現活動ができていたと振り返る。一方、「今は一つの興行で億単位のお金が動く。ふとわれに返ると怖い」。それゆえの部活だという。

 現代美術家、藤浩志さん(58)=鹿児島市出身=は地域での活動を部活と表現し、その拠点(部室)づくりを提唱している。十和田市現代美術館(青森県)に勤務時に、芸術家が部長を務める部活を考案した。リサイクル紙で造形を楽しむ「ワケあり雑がみ部」(仙台市)など、全国で部活と部室づくりを行う。

 藤さんは、東日本大震災でのボランティア活動を引き合いにだす。共通するのは「やらされている感」のなさだという。動機は自らの興味や関心のみ。そこから人がつながっていく。「釣り好きが集まる居酒屋とか、意識していないだけで部活のようなものはありますよ」と語る。

 確かに身の回りには部活的なものは多い。イベントスペースを設けた映画館や書店には、同じ興味、関心を持つ人々が集う。ネット上の交流サイトの趣味グループもその一種と言えそうだ。

 会社一筋だったサラリーマンが定年後、地域との関わりで悩みだすというのは昔の話。終身雇用制が崩れつつあることに加え、働き方改革でプライベート時間も増えていく。しかも保活、妊活、終活といった「○活」の元祖であろう部活は、敷居が低く飛び込みやすいのかもしれない。

 松尾さん、藤さんの言う部活とは、家、会社、仕事から離れた居場所のようなものなのだろうか。不惑を過ぎてしまった私だが、今更ながら部活へのあこがれが芽生えてきている。 (文化部)

    ×   × 

  ▼おがわ・しょうへい 1977年、北九州市生まれ。佐賀総局、宇佐支局、東京支社報道部などを経て現職。著書に「ラーメン記者、九州をすする!」

PR

PR

注目のテーマ