「もうやめて」ってくらい笑わせます 初の全国ツアーに挑む上方落語家 桂 雀々さん

西日本新聞

 「上方落語の爆笑王」の異名をとる人気落語家、桂雀々さんが自身初の全国ツアーに挑んでいます。芸歴40年を超えてなお尽きないチャレンジ精神。その裏には没後20年となる師匠への思いも。高座と同様、大きな身振り手振りで機関銃のような勢いで熱く語ってくれました。

 -初の全国ツアー中で、9日には福岡公演が控えています。

 ★ 九州のお客さんはノリが良くて、すべてに熱い。「さぁ、笑かせよ」という空気感がありますねん。「もうやめて」っていうくらい笑わせにいきますよ。

 -九州も江戸落語が一般的。上方落語はやりにくさは?

 ★ それはない。福岡は「博多・天神落語まつり」で上方落語を受け入れる態勢ができているわけですよ。耳が肥えて、ある意味、もう円熟してきている。

 -全国ツアーは師匠の桂枝雀さんもやっていた。憧れはあった?

 ★ うん。師匠のツアーには僕も前座として付いて回りました。どこも満席で爆笑に次ぐ爆笑で。上方落語を全国に知らしめたといっても過言ではないです。いつか自分でも、と思っていました。

 -すでに全国で独演会をやっている。芸歴40年超の現在までツアーをやらなかったのはなぜ?

 ★ うちの師匠は「年いってから売れたら、こんな楽しいことはない」と、いつも言ってくれた。若い時に売れるのもいいけど、落語がついていかない。落語は時間かけてこつこつ積み上げていくもんやから。60歳を目の前にして、顔や名前を売ることと落語の部分のバランスがちょうどかなと。ようやくスタート地点に立ったかなと。ここから75歳まで走り続けられたら、楽しいもんができるんじゃないかと思うのね。師匠がやっていないことをやろうという思いの中で、自分なりに矢印向けてきたわけで。

 -今年は枝雀師匠が亡くなってちょうど20年ですね。

 ★ もっとアピールするいい時期やなと思います。いつも比べるのは立川談志、家元です。弟子の志らくや談春、志の輔が舞台やマスコミの前で家元のことを語っているが、あれはいい役目だなと。確かに談志師匠はすごい人やけど、なんのなんのと。「枝雀はもっとすごい人やったんや」と言い続けていきたい。

 -息が続く限りしゃべるスタイルや高座での動き、声質、どれも師匠と似ている。

 ★桂 若い頃から似てましたですね。内弟子時代に電話で「もしもし」と言うと、僕のことを師匠だと思ってしゃべる人が多かった。それと、リズムと間合いと表情の3本柱が一番の教えでしたからね。

 -著作「必死のパッチ」に書いているが、父親のギャンブルで、11歳で母親が蒸発、12歳で父親も家出した少年時代が壮絶ですね。

 ★ 母子家庭でも父子家庭でもない、子どもが一人で暮らす「子家庭」でした。借金取りに身の上話して逆に5000円もらったり。それが人前でしゃべって初めてのギャラ。芸は身を助けるやないけど、落語があったからこそ生き延びたようなもんですよ。

 -父親のギャンブルで苦労したのに、最初に覚えた落語が、ラジオで聞いた「狸賽」。サイコロばくちが出てくるネタというのが皮肉というか何というか。

 ★ たまたまなんですよ。いま「狸賽」をやる時は親の役が金を座布団の下に入れて、ひざでぐっと抑えるしぐさをやっている。子どものときに、家で丁半ばくちをしている大人の姿を見てるからリアリティーが出るんですな。

 -2年前、芸歴40周年を迎えた時「2020年に日本武道館で還暦独演会をやる」と語っていた。

 ★ 東京五輪の閉会式の日が誕生日なんですよ、60歳の。落語に関して考えていることが二、三あって。2020年は僕の中では大きい変化のときなんですね。

 -今回のツアーは来年につなげる壮大な前振りですね。

 ★ 何かやってますよというアピールがいるわけでね。まずは上方落語を聴いてもらいたい。上方落語は登場人物がみんな憎めないんですよ、ほんで善人なんですね。悪いやつが出てこない。それが魅力やと思うんですね。一度聴いてもろたら、どんだけ楽しいかと思うんですね。

 ▼かつら・じゃくじゃく 1960年8月9日生まれ、大阪市出身。本名、松本貢一。小学生時代からテレビの視聴者参加番組の常連として活躍。77年、桂枝雀に入門。落語以外に、俳優としても存在感を示している。全国ツアーの福岡市・イムズホールでの公演は9日午後1時から。チケットは発売中。キョードー西日本=0570(09)2424。

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