【天安門事件30年 元学生リーダーに聞く】(上) 王丹氏 犠牲者思い人生懸け闘う

西日本新聞 国際面

 ‐なぜ天安門事件当時の学生運動は失敗したのか。

 「学生と知識人だけが盛り上がって一般国民に参加を呼び掛けるのを怠るなど理由はいくつもある。最大の理由は(最高指導者の)〓小平氏の権力が強く、戒厳令が出ると改革派も含め政府内の全員が従わざるを得なかった点だ」

 ‐後悔の念はあるか。

 「もちろんない。失敗から教訓を得る必要はあるが、私たちが失敗を語る前に、国民に銃口を向けた罪を政府が認めるのが先だ」

 ‐事件はどのような影響を与えたか。

 「中国本土で事件の影響を探すのは難しいが、香港の『雨傘運動』(2014年の大規模民主化デモ)では事件当時の支援者を親に持つ若い世代がその影響を受けて運動に参加した。本土でも事件当時の学生たちが今は人権派弁護士となり、(民主化につながる)何かをしようとしている」

 ‐事件では多くの犠牲者が出た。リーダーとして責任をどう感じるか。

 「命を落とした仲間たちへの罪の意識は常にある。だからこそ私は諦めない。今も活動を続けるのはその責任を取りたいからだ。犠牲者のため、闘い続けることに人生の全てをささげる」

 ‐民主化が進まない中国の現状をどう見るか。

 「習近平国家主席の下、状況は〓氏の時代より悪化している。短期的に見れば民主化への希望はまったくない。ただ現体制は国内の統制に自信があるとされるが、そうは思わない。監視を厳しくすればするほど、社会の不安定性が増していることに神経質になっていることが分かる」

 ‐現状を変える道はあるか。

 「あると思う。今、その力が市民に十分にあるとは思えないが、習氏が(政権運営などで)失敗すれば、共産党内の不満を持つ勢力との間で権力闘争が起きるだろう。それが変化のチャンスになる」

 ‐中国の若者への期待はあるか。

 「心配なのは現体制による抑圧への恐怖から、若者たちが中国の民主主義に関心を失うことだ。彼らが現状に失望して海外へ出る状況が続けば、未来はない。一方で、今は不満を口に出せなくても、若者たちがいつか怒りの引き金を引く時が来るという期待は持っている」

 ‐中国と対決姿勢を強めるトランプ米政権は、民主化への助けになり得るか。

 「トランプ大統領は金や関税にしか関心がない。米中関係を是正したいなら、中国国内の人権問題を理解すべきだが言及しない。今後も触れないだろう」

 ‐日本はどうか。

 「民主主義国家ではない中国は日本にとって脅威だ。それなのに日本が中国の民主化や人権問題に強い関心を示さないことに驚いているし、理解できない」

 ‐専門家の中には、中国はある程度、自由を制限しないと、社会の混乱を招くとの指摘がある。

 「空論だ。民主化後どうなるか私たちも分からないが、何が起きても対処すればいい。心配だからと行動をやめることはできない」

 ‐今後、中国の民主化を海外からどう支援するか。

 「30年前とは別の方法を取らなければならない。重要なのは民主化後の政権移行をいかに円滑に行うか。具体的な解決策を見いだすため、研究を進めたい」 (聞き手は田中伸幸、ワシントン近郊で)

※〓は「登」に「おおざと」

   ◇    ◇

 天安門事件から30年、中国は世界2位の経済大国に飛躍する一方、民主化には背を向け続けてきた。共産党一党独裁による強権的な統治は今後も続くのか、変化の兆しは‐。当時の学生リーダーに聞いた。

 おう・たん 中国の民主活動家。北京大在学中、学生リーダーの一人として民主化運動を主導。天安門事件後に逮捕され、懲役刑を受ける。1995年に再逮捕されるが、98年に釈放され米国に亡命した。米国でシンクタンクを設立するなど活動を続ける。50歳。

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