「ハイテンションボルト」が足りない 五輪建設ラッシュで8カ月待ち、国交省は異例措置 スーパーもスタジアムも工事遅れ (2ページ目)

西日本新聞 坂本 信博

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 高力ボルト不足は、公共工事にも深刻な影響をもたらしている。

 「世界新三大夜景」に選ばれた長崎市の観光名所・稲佐山。山頂とふもとを結ぶスロープカーの建設工事もその一つだ。同市土木建設課によると、当初は今年7月に完成する予定だったが、高力ボルトを確保できず、工期延長を余儀なくされた。

 「工事業者がボルトメーカーと交渉して何とか入手のめどが立ったが、完成は来年1月にずれ込む」と担当者。工期延長で工費は2500万円の上乗せが必要という。

 熊本市でも、今秋のラグビーワールドカップ(W杯)の会場となる「えがお健康スタジアム」で、W杯組織委員会が会場整備基準に挙げる大型スクリーンの完成予定が2月中旬から6月末に遅れる見通し。

 熊本県国際スポーツ大会推進課によると、工事に必要な高力ボルト約1500本を昨年12月時点で入手できる予定だったが一本も入荷せず、2月初頭で工事が停止。国内メーカー8社でつくる「高力ボルト協会」(大阪)に相談したところ、「『W杯に影響が出てはいけない』と優先的に確保でき、4月からようやく工事を再開できた」という。

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 ボルトがないから工事ができないという異常事態。一体何が原因なのか。

 福岡県行橋市などに製造工場があり、業界最大手の日鉄ボルテン(大阪市)によると「2020年東京五輪・パラリンピックに伴う建設ラッシュで、工場の生産能力を超える需要が発生した」という。

 国土交通省が3月に実施した高力ボルトの需給動向調査では、調査対象の9割以上が「ボルト不足が工期に影響した」と回答。うち1割弱は工事の受注取りやめを余儀なくされていた。通常は1~2カ月とされる高力ボルトの納期が全国平均で約8カ月、九州でも約7・4カ月に伸びていることが分かった。

 同省労働資材対策室は「ボルトの欠品を懸念する建設各社が、できるだけ多く確保しておこうと過剰に発注しており、市場の混乱による一時的な現象」と分析。5月中旬、国が専用の注文書をつくって必要な分だけ発注するよう建設業界に促す異例の措置に出た。

 高力ボルト協会は「オイルショックでトイレットペーパーが売り切れた時の状況に似ている。五輪特需なのか、過剰発注によるものなのか、なんとも言えない。2025年には大阪万博もあり、解消のめどは立っていない」と話している。

 ボトルネックならぬ「ボルト」ネック――。長引けば、全国各地で建物の完成が遅れ、さまざまな業界にも影を落としかねない。

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