中国、左派学生も弾圧 天安門事件30年 労働支援抑え込み

西日本新聞 国際面

 1989年6月4日の天安門事件で学生らの民主化運動を武力弾圧した中国共産党は、その後も力で異論を封じ込めてきた。特に学生の動きには神経をとがらせており、社会主義の実践を目指す左派(保守派)学生の労働者支援運動でさえ抑え込み、体制批判の芽を摘み取っている。 (深〓で川原田健雄)

 5月、広東省深〓市郊外の溶接機械工場。出入りする従業員に昨夏起きた労働争議について尋ねると一様に表情が硬くなった。「知らない」「会社に聞いてくれ」。誰かが通報したのか、しばらくすると私服警官とみられる男性が記者の後をつけてきた。

 関係者によると、争議は長時間労働や罰金制度への不満がきっかけだった。従業員側は待遇改善と労働組合の設立を求めたが、会社側は認めず対立が激化。昨年7月、従業員側のメンバーが何者かに暴行を受け、抗議活動に加わった約30人が警察に拘束されると、インターネットで騒動を知った中国各地の学生たちが支援に駆け付けた。

 争議への支援をネットで呼び掛けたのは沈夢雨さん。広東省の名門・中山大大学院を修了後、労働者の権利保護に役立ちたいと自ら工場労働者になった異色の経歴を持つ。北京大在学中にセクハラ事件の情報公開を求めた同大卒の女性も署名を呼び掛け、北京大や清華大、南京大など10を超える大学の学生ら2千人以上の署名が集まった。多くはマルクス思想を信奉する左派学生だった。

 しかし、支援グループのリーダーだった沈さんは昨年8月11日、何者かに連れ去られて行方不明に。同24日には沈さんの呼び掛けに応じて工場近くに集まっていた北京大の学生ら約50人が警察に一斉拘束された。

 中国で労働争議は珍しくないが、支援に学生が駆け付けるのは異例。中国当局はかつてない展開が反党的な動きに発展しないかと警戒し、支援活動の封じ込めに動いたとみられる。

 国営通信新華社は一斉拘束の夜、「西側の非政府組織の支援を受けた海外組織」から資金援助を受けた者たちが違法行為を重ねたとする記事を配信。労働者の正当な権利要求ではなく「敵対勢力による陰謀」という形で、学生らへの弾圧を正当化した。今年1月には、沈さんら拘束された男女4人が「過激組織から洗脳され違法行為をした」などと“ざんげ”する動画がネット上で公開された。

 左派学生への弾圧は続いている。欧米メディアによると、社会運動に参加した北京大の学生が処分されたり、複数大学の左派サークルが活動を停止させられたりした。4月29日には労働者問題に関わった北京大の学生5人が失踪。直前に警察関係者とみられる人物から尾行されていたという。

 「新時代の青年は党の言葉を聞き、党と共に歩まなければならない」。学生5人が失踪した翌30日、北京で開かれた愛国主義運動「五・四運動」の100周年記念大会で、習近平国家主席は若者に党への忠誠を求めた。100周年当日の5月4日には、清華大などに多くの当局者が配置され、愛国主義運動に乗じて学生に不穏な動きがないか目を光らせた。

※〓は「土へん」に「川」

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