天安門事件30年 裏切られた民主化の期待

西日本新聞 オピニオン面

 1989年6月4日、中国・北京の天安門広場やその周辺で民主化を求めてデモをしていた学生や市民に対し、人民解放軍が弾圧に乗り出して発砲し、多数の死傷者が出た。この「天安門事件」から30年となる。

 中国政府は、国内での天安門事件に関する発信を厳しく制限しており、事件の実態究明は進んでいない。情報統制が功を奏してか、中国国民の間での関心も薄れているという。

 この事件は、中国共産党による一党独裁政権が政治の民主化を拒絶し、国民の民主化運動を徹底的に抑え込む姿勢を明確にした大きな節目となった。

 その後、中国では「社会主義市場経済」の採用で経済成長が進み、経済規模は米国に続き世界第2位となった。国民が一定の豊かさを享受しつつある一方で、政治の民主化を求める動きは広がりを見せていない。

 習近平政権は、言論の自由容認や一般選挙導入などの民主化に取り組むどころか、権力の一極集中を進め、労働者の擁護や環境保護などの市民運動にまで締め付けの対象を広げている。中国政府は最新のIT技術を駆使し、未曽有の監視国家をつくり上げようとしている。

 天安門事件後の国際社会は、中国に制裁を科しながらも、「経済成長で育成される中間層によって民主化要求が高まり、やがて共産党も自発的に民主化へとかじを切るのではないか」と期待し、やがて制裁も解除した。しかし、その期待は完全に裏切られている。

 天安門事件の学生リーダーとして投獄され、その後米国に移住した王丹氏は、事件30年を前に東京で記者会見し「中国共産党にとって民主主義は敵。国際社会は中国共産党の本当の顔を認識すべきだ」と呼び掛けた。

 米国をはじめとする先進諸国はこれまで、中国の人権状況を注視し、時に警告を発してきた。国際社会の目は、不十分にせよ中国政府の民主化運動弾圧を抑制させていたはずだ。しかし、現在のトランプ米政権は対中貿易赤字の解消には熱心だが、人権問題には無頓着に見える。

 日本や欧州先進国は米国を巻き込み、中国国内の民主化運動や人権活動に対する弾圧への監視を怠らず、粘り強く民主化を働き掛けていく必要がある。

 中国政府による民主化封じ込めは、一見成功しているようでも、いつまでも通用するとは思えない。経済不安などをきっかけに一党独裁制への不満が高まり、社会が急速に不安定化する可能性もある。民主主義という普遍的な価値に背を向けたまま経済発展を続けても、中国に真の安定は訪れないことを、中国共産党は認識すべきである。

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