「原画」は中国起源と特定 ド・ロ神父の木版画 

西日本新聞 長崎・佐世保版

 明治期の長崎で活動したフランス人のド・ロ神父(1840~1914)が、教義を分かりやすく説くため絵師に作らせた木版画「ド・ロ版画」。その起源や分布の調査成果を、国際日本文化研究センター元准教授で日本語文学者の郭南燕(かくなんえん)さんを中心とする研究グループが専門書「ド・ロ版画の旅」にまとめた。

 ド・ロ版画は1875年ごろに長崎の大浦天主堂付設の神学校で刷られたとされ、全10種類。聖人像や、善人の最期の様子などを絵で表現したものがあり、版木は天主堂に残る。研究グループは、来日した宣教師が日本文化に与えた影響や貢献を検証する過程でド・ロ版画に着目した。

 調査成果で興味深いのは、ド・ロ版画の起源を、1860年代に中国で活動したフランス人のヴァスール神父が布教に用いた木版画であると特定したことだ。ヴァスール版画は100種類以上あるとされ、これまでもド・ロ版画の一部に類似性を指摘する研究者はいたが、今回の調査でド・ロ版画全10種類の手本とみられる「原画」にたどり着いた。研究グループはそれぞれに共通点を見いだした。

 ド・ロ神父がどこで原画を見たかという謎にも迫った。郭さんは、1865年の「信徒発見」で知られるプチジャン神父がヴァスール版画を中国から日本に持ち込んだことを踏まえ、「ド・ロ神父が(滞在歴のある)横浜や長崎でヴァスール版画を見て、版画の手本にしたのだろう」と推測する。

 大浦天主堂キリシタン博物館(長崎市)の内島美奈子研究課長(キリスト教美術)も原稿を寄せ、ド・ロ版画が長崎だけではなく、福岡県大刀洗町など九州各地の教会や博物館などに計86点存在することを紹介。これらの所在地は、ド・ロ神父を日本に派遣したパリ外国宣教会の活動地域と重なっており「布教活動や潜伏キリシタン集落との関係性を知る手掛かりになる」と指摘する。

 研究成果について、ド・ロ版画に詳しい女子美術大の原聖(きよし)名誉教授(比較民俗学)は「ド・ロ版画の手本がすべて、ヴァスール版画と実証したのは素晴らしい」と話す。

 郭南燕編著「ド・ロ版画の旅‐ヨーロッパから上海~長崎への多文化的融合」(創樹社美術出版)は4968円。

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