超高齢社会 ネットで便利に 孤立防止に交流サイト 認知症でもお助け機能 IoSJ、福岡市でシンポ 牧代表理事「狭くなった世界を広げよう」

西日本新聞 くらし面

「インターネットが社会や生活の基盤になっており、シニアもネットにつながって生きがいを持つことが大切」と語る牧壮さん(右) 拡大

「インターネットが社会や生活の基盤になっており、シニアもネットにつながって生きがいを持つことが大切」と語る牧壮さん(右)

 「全てのシニアをインターネットにつなぐ」を掛け声に、高齢者が情報通信技術(ICT)を使って孤立を解消したり、生活の質を高めたりすることを支える団体がある。東京の一般社団法人「アイオーシニアズジャパン(IoSJ)」。5月24日、福岡市で初めてシンポジウムを開き、代表理事の牧壮(たけし)さん(82)が「ICTを活用できることが便利な生活を送る前提となる時代。シニアもネットにつながり、世界を広げよう」と提言した。

 牧さんは2013年、海外で十数年続けたインターネット関連の仕事を終えて帰国した際、日本が超高齢社会となり、仕事や生活の基盤がネットになっていることに驚いたという。高齢者がネットを通じて社会参画し、元気に年を重ねる手助けをしようと、17年にIoSJを立ち上げた。

 牧さんは、高齢者は体の衰えや子どもの独立、配偶者の死去などに伴って外出が減り、人と接する機会が減るとみる。日本の高齢化率は65年、総人口の4割に近づく見通し。「高齢者の行動範囲は自宅の半径500メートル」として、狭くなった世界を広げるのにネットが有効と呼び掛ける。

 例に挙げるのが、会員制交流サイト(SNS)などでのやりとり。旧知の友人のほか、世代を超えて新たな関係を築くことができる。牧さんはSNSでしばらく情報を発信しないと、友人から「大丈夫?」と心配されると言い、「ネットを活用すれば孤立を防げるし、周囲の見守りにもつながる」と効果を語る。

 認知症の人にもICTが助けになるという。失われる記憶を、タブレット端末などによって補う方法で、「記憶に頼らず記録に頼る」をキーワードに挙げる。

 日々の記憶を思い出せなければ、キーボードや音声で入力し記録しておく。外出時は地図アプリで道順を調べる。途中でどこにいるか分からなくなっても、現在地や自宅の場所は表示できる。食事をしたか分からなくなるのを防ぐため、カメラ機能で献立を撮影し、記録する。こうした取り組みで、外出などに役立てている人もいるという。

 IoSJは高齢者向けのネット教育や研修などを手掛ける。牧さんはシンポで「日本はシニアのICT活用が先進国で最も遅れている。シニアが新しい仲間とつながり、便利な生活を送るためにも、ICTのメリットや機器の使い方を教える仕組みをつくるべきだ」と強調した。

 デジタルと高齢者 どう結ぶ? 「心の壁を取り除く地域支援員を」

 シンポジウムは「デジタル活用共生社会」の実現をテーマに開かれた。牧壮さんのほか行政関係者、最新技術を使った高齢者向けサービスを提供する企業関係者らが登壇。ICTや、あらゆる機器をインターネットでつなぐIoT、人工知能(AI)によるサービスを、高齢者が使えるようにする方策を話し合った。

 総務省情報流通振興課の犬童周作課長は「デジタル活用支援員(仮称)」を地域ごとに置く国の構想を紹介。高齢者に「何のために必要なのか」「身近な同世代の人に教えてほしい」との声が強いためという。

 犬童氏は「使うと楽しく、便利になることを教え、心理的な壁を取り除くことが大切。同じ地域に住む人を支援員にして小学校区に1人置き、相談に乗る形ができないか」と語った。

 声を掛けると質問に答えたり、家電を操作してくれたりするAIスピーカーで、高齢者向けサービスを提供する「ボイスタート」(東京)の回谷信吾社長は、神奈川県鎌倉市と実施した実証実験を紹介した。

 同市の高齢者60人の自宅に昨年10月、機器を設置。AIスピーカーに話し掛けて行事を知ったり、声のトレーニングやラジオ体操を楽しんだりする同社独自のアプリを活用してもらった。回谷氏は「アンケートでは9割以上が『使い続けたい』と言ってくれた。よく使ってくれたのは80代だった」。特に1人暮らしの人に喜ばれたという。

 機器の設置や使い方のサポートは地元の高齢者13人が担当し、報酬を支払ったという。犬童氏は「こうして企業や地域で普及に取り組む人に、ぜひ支援員になってもらい、力を発揮してほしい」と呼び掛けた。

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