草木染文化伝え39年 武雄市の染色家緒方義彦さん

西日本新聞 佐賀版

 武雄市若木町の染色家、緒方義彦さん(65)の「杜(もり)の染舎茜(そめやあかね)染色工房」が4日、開館39年目を迎えた。1981年に同市武雄町の「如蘭塾(じょらんじゅく)」で教室を始め、5年前に若木町の工房に移った。季節と風、人が行き交う場所で草木染の文化を伝え、訪れる人々と学びを深めている。

     ×

 4日は、オーストラリアからの観光客5人が藍染めを体験し、にぎやかな開館記念日になった。武雄市観光協会などが推進するインバウンド(訪日外国人)向け体験型観光の一環で、各自が自分だけの作品を仕上げた。

 ツアーを企画した観光アドバイザーの竹永一則さんは「欧米では学びを通し思い出づくりをする生涯学習の考え方が浸透している。観光も見物より体験の時代」と言う。作品を日の光にさらすと藍色がまぶしく映え、一行は「とても芸術的」と声をそろえた。

 牧場主のグレッグ・バーローさん(65)は先住民アボリジニの信仰を作品に込めた。「自然と共存するアボリジニが、森羅万象の法則の源とする『ドリームタイム』を模様にした」と話し、緒方さんは「大地のエネルギーを感じます」と共鳴した。

     ×

 緒方さんの染色も循環する自然界の摂理とともにある。染料は旬を迎えた藍のほか、アカネや桜、ザクロ、タマネギ、地元のレモングラスなどの植物や土、そして鉱物。「化学染料は強すぎて、やはり自然の味わいとは違います」。例えば銅でも、人工的な精製物より天然のクジャク石を使う。

 「物作りは本来、自由で束縛はない。ただ制約はありますが」と緒方さん。「制約」とは技術。染色でも経験を積むほど面白いのが、媒染材を使ってひとつの原料から幾通りもの色を生み出す「錬金術みたいな」世界という。

     ×

 佐賀市で生まれ、税理士の父の後継ぎを期待されたが美術に心引かれてやまず、東京造形大に進んだ。

 卒業後、かつては中国の女子留学生の教育施設だった「如蘭塾」内の更紗資料館の一角に染色教室と工房を開いた。「工房を開く日、父が雨の中に額縁までを買ってきて、決して上手な字ではないけれど『和』と書いてくれました」。その字は現在も工房に掛かる。

 若木の工房には人が集い、一緒に四季折々の草花も集まり、静かに古楽が流れる中で受講生それぞれが色と形を考える。緒方さんは「音を聞いて色をイメージしてみては。美は調和です」と伝える。

 現在全国各地を巡回中の「第93回国展」では会友賞を受賞し、初心のころと変わらず「新しい図案を生み出すこと」に胸を高鳴らせながら、教室の準備はいつも入念にする。最近、茶道の精神である「和敬清寂」に通じ、茶席に用いられる布を染めた。 

佐賀県の天気予報

PR

佐賀 アクセスランキング

PR

注目のテーマ