冤罪の防止 証拠の全面開示へ立法を

西日本新聞 オピニオン面

 検察の“証拠隠し”などが誤った裁判の結果を招き、冤罪を生んだ-。東京地裁が先日こう断じて、国と茨城県に約7600万円の賠償を命じた。1967年に同県内で起きた強盗殺人事件「布川事件」を巡り、再審で無罪となった男性が国家賠償を求めた訴訟の判決だ。

 刑事裁判では、検察が提示する証拠が有罪立証に有利なものに偏り、被告・弁護側が不利な立場に置かれることが多い。そうした中で、判決は、重要な証拠について「検察官は有利不利を問わず法廷に出す義務がある」とし、これに反した行為を違法と明確に認定した。

 刑事訴訟法では、証拠の開示が制約され、再審に関しては開示の規定そのものがないことが問題視されてきた。国側は争う構えだが、判決を真摯に受け止め、法の見直しを図るべきだ。

 布川事件では、男性2人が自白や目撃証言によって犯人とされ、78年に無期懲役が確定した。服役後、自白の信用性に疑問があるとして再審が認められ、2011年に2人とも無罪(1人は15年に死亡)になった。

 今回の判決は、取り調べ段階から警察官が実際にはない目撃証言を持ち出したり、家族が自白するように言っているとうそを告げたりした捜査を「偽計を用いた」と厳しく批判した。

 その上で、検察官が公判で目撃証言に関する捜査報告書などの開示を拒んだ行為も違法と指摘し、これらの行為がなければ「遅くとも控訴審までに無罪が宣告され、男性は釈放された可能性が高い」と述べた。

 証拠に関しては「裁判の結果に影響を及ぼす可能性が明白なもの」「可能性が明白でなくても開示しない合理的理由がないもの」は、検察官が法廷に出す義務を負う、と指摘した。

 現在の刑事訴訟法では、検察が法廷に提出しない分も含め、手持ちの証拠リストを示すルールなどが定められている。しかし、開示の可否は検察官の裁量に委ねられた部分があり、再審での開示に関する規定はない。

 日弁連は再審での証拠開示の法制化を強く訴えている。布川事件のほか、熊本県の松橋(まつばせ)事件でも再審請求段階で初めて開示された証拠が無罪の決め手になった。一方で、法規定がないため検察が開示に応じない事例もなお多いのが実情だからだ。

 捜査での押収品や関係者の供述調書なども含めた証拠類は、検察の所有物ではない。真実を究明し、公正な裁判を行うための「公共財」であり、本来、全面開示を原則とした法制度が求められる。

 それは捜査全体の可視化にもつながり、何よりも冤罪の大きな歯止めになるはずだ。

PR

最新記事

PR

注目のテーマ