平和の矢、世界射抜け G20要人前に流鏑馬 日米親戚の牛尾さんとウシオさん

西日本新聞 社会面

 「日本の伝統と心を、世界にしっかりと伝えられた」。福岡市で20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が開幕した8日夕、地元の飯盛神社(同市西区)に伝わる流鏑馬(やぶさめ)の神事が参加国代表団に披露された。射手の大役を果たした神職牛尾毎秀(ことひで)さん(30)と、進行役を務めた米国在住の日系4世コウジ・クラーク・ウシオさん(23)は親戚。大きく温かな拍手に包まれ、流鏑馬を通した国際親善を続けていくと誓い合った。

 舞台は、柔らかな夕日が福岡城跡を照らし出す舞鶴公園(同市中央区)。G20の財務相や中銀総裁たちが息をのんで見つめる中、毎秀さんが疾走する馬上からヒョウと続けざまに放った矢は見事、二つの的に突き刺さった。

 「ワオッ!」。歓声と拍手が湧き起こる。一連の流れと流鏑馬の極意を、コウジさんは英語で分かりやすく解説した。

 福岡市の無形民俗文化財に指定されている飯盛神社の流鏑馬は、これまでも欧米に出向く形でたびたび披露され、異文化交流に一役買ってきた。

 中でも、毎秀さんとコウジさんの胸に深く刻まれているのが、まだ幼かった約20年前の米ロサンゼルス訪問。流鏑馬は、邦人や日系人が多く暮らす「リトルトーキョー」の祭りから招待を受け、祖国を思いながら異国の地で奮闘した日系人先祖を供養しようと参加した。2人もこの一行に加わっていた。

 実は1939(昭和14)年に亡くなったコウジさんの曽祖父も、米国に渡った移民の一人だった。毎秀さんの父、飯盛神社宮司の秀司さん(68)の祖父の兄に当たる人だ。経済的に苦しかった一族を救おうと日本を後にし、現地でクリーニング店を営みながら実家に生活物資を送り続けたという。

 その足跡をたどるようなロサンゼルスの旅で2人は、先祖への感謝と両国の友好を託した流鏑馬に送られる喝采を、全身で感じ取ったのだった。

 8日、世界の要人に見守られ、役目を無事に終えた時、往時の記憶が鮮やかによみがえった。流鏑馬は、人と人の心をつなぐことができる。毎秀さんは「異なる文化や価値観が理解し合える世界になるよう願いを込めた」、コウジさんも「伝統文化を通し、お互いを尊敬し合える関係を築いていく一歩になれば」と語った。

福岡県の天気予報

PR

PR

注目のテーマ