映画監督の降旗康男さんが亡くなった後、高倉健さん主演のビデオを数本借り、見終わって思った…

西日本新聞 オピニオン面

 映画監督の降旗康男さんが亡くなった後、高倉健さん主演のビデオを数本借り、見終わって思った。滋味あふれる寡黙な人間ドラマの骨格を形作る「健さん」像そのものが降旗監督の代表作かも、と

▼任侠(にんきょう)路線の出口と新路線の入り口を兼ねた「冬の華」(1978年)、出会いと別れが交差する「駅 STATION」(81年)、愚直に生きる「鉄道員(ぽっぽや)」(99年)…

▼戦争の傷痕を生きる「ホタル」(2001年)は、九州大(当時は福岡市・六本松キャンパス)で学生に見てもらう企画もあった。前触れなしで主演男優も駆け付け、学生らを驚かせた

▼映画と同じく少ない言葉で「戦争の犠牲者がいて、今の日本がある。そのことを、感じてほしい」と話した。映画以外の話になり、学生が質問に詰まると「九州のもんが、しっかりせんか」などと言って教室を沸かせる高倉さんだった

▼降旗さんは自身の仕事について「観客代表」という言葉を使っていたことを訃報記事で知った。観客代表として、素顔はちゃめっ気もある俳優高倉健を、ファンがそうあってほしいと願う姿かたちに撮り整えていったのだろう。国民的俳優と形容されるに至ったその人の晩年は、何本も撮った人の言葉を重ねると味わいを増す

▼高倉さんは散髪に行く途中などに降旗さんの家を訪ね、映画の話をいろいろして議論もしたそうだ。今ごろは多分、あの世で話の続きをしている。

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