『ビリギャル』は奇跡じゃない――元ビリギャルが送るエール本

西日本新聞

 2013年に出版されてベストセラーになったノンフィクション『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶応大に現役合格した話』(坪田信貴・著、以下『ビリギャル』)から5年半。『ビリギャル』の主人公はどうしているのだろう。

 “元ビリギャル”となり、現在は、受験や家族との関わり方について、教育現場に携わる人や子どもに合わせてテーマを考え、講演活動を行っている。本書は、著者の初の自著となる。『ビリギャル』誕生秘話から、大学生活、就職、転職、結婚、離婚まで、著者の素直な言葉で綴られている。著者の人生の物語ではあるが、人生語りの本ではなく、母親や家族、恩師である坪田氏、友人、同僚、パートナー、そして子どもたちとの出会いを通して、頑張るとは何か、働くとは何か、人を愛するとはどういうことか、といった問いへのヒントを与えてくれる。

 例えば、慶応大学を目指した理由について。著者は「慶応に行きなさい」と誰かに言われたのではない、自分で決めたと言う。その理由がこれだ。

 「櫻井翔くんが行っているところは、さぞかしイケメンがゴロゴロいそうだ、なんか楽しそうだから、私も行くわ!」だ。そんなでもちゃんとした私の「意志」だったんだもん。無理矢理やらされるより、よっぽど頑張れる。(本文より引用)

 ワクワクするかしないか、それだけで次のライフステージを決めていく行動力と、真っ直ぐ過ぎる感性と言葉に、勇気をもらう読者も多いことだろう。

 著者によると本書は、「“正しい日本語”かどうかと問われると、微妙なところが死ぬほどある」とのこと。正しいかどうかよりも「伝わる」ことを重視して書かれた本書は、著者が言うように、普段本を読まない人でもスラスラ読めるような言葉運びとなっている。読者は著者の講演を聞いているかのような、直接話しかけられているかのような感覚を持つのである。

 勉強や進路に悩む中学生や高校生はもちろん、中高生の親世代にもおすすめの一冊である。また、先生の目線から書いた『ビリギャル』に対して、生徒側から書いたアンサー本として読むとその対比が面白い。2019年春、著者は聖心女子大学の人間科学部教育研究領域修士課程に進学した。支えてくれた母や彼女の能力を引き出した坪田氏のように、子どものための環境づくりに邁進していくのだろう。今後の著者の活躍が楽しみである。

 

出版社:マガジンハウス
書名:キラッキラの君になるために ビリギャル真実の物語
著者名:小林さやか
定価(税込):1,512円
税別価格:1,400円
リンク先:https://magazineworld.jp/books/paper/3042/

 西日本新聞 読書案内編集部

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