人間も“ざんねんないきもの”だった!?意外でトホホな人体のしくみ。

西日本新聞

 「たとえどんなに上品で美しい人であっても、鼻くそがたまらない人はいません。毎日とはいかなくても、週に何日かは、誰もが鼻くそをほじっているはずです」。テレビでもおなじみの医師、工藤孝文氏は本書でこう断言する。

 思えば鼻くそはなんとも「ざんねん」な存在だ。そもそも名前からして扱いがひどすぎる。「目くそ鼻くそを笑う」というが、目くそにおける“目ヤニ”のような正式名称は鼻くそにはない。耳そうじのサービスはあっても、鼻そうじのサービスは聞かない。綿棒や耳かきはポピュラーなのに、なぜ鼻くそ取り器なるものは販売していないのか。

 そんな徹底的に忌み嫌われている鼻くそに対して、著者はしかし、こう語る。「鼻くそは、私たちが生きて呼吸している証でもあります」と。

 まるで犬がひっくり返って「ニャー」と鳴くのを見たような衝撃である。これはいままで鼻くそについて語られた文章のなかで、もっともポジティブなフレーズではないか。生きている証である。生きているからたまるんだ、である。恋したときの胸のトキメキ、感極まって流す涙と、その価値においてなんら変わることのない存在ということなのだ。

 本書はその鼻くそと同じく、一見「ざんねん」にみえる人体の不思議なしくみを、医学的または科学的に解明してくれる一冊である。ほくろから太い毛が生える理由。なぜ緊張すると足がガクガク震えるのか。ヨダレの目的。おならを我慢すると口臭が強くなるの? しゃっくりって一体…。などなど、その数全部で75。「この機能いる?」とツッコミながら、わかりやすくユニークに教えてくれる著者の語り口も魅力だ。

 本書を一読すると、人体というもののトホホ感と、それから離れて生きることのできない人間のある種の間抜けさが浮かび上がってくる。そう、外見や社会的地位にかかわりなく、生きているということはそれだけでカッコ悪いものなのだ。コンプレックスなんてそれこそ目くそ鼻くそにすぎない。傍目からはキラキラ輝いているように見えるあの人も、同じように日々鼻くそをため、ほくろから太い毛を伸ばしている。そう考えれば少しは気持ちが楽になり、他人にもっと優しくなれるのではないか。ただの雑学集で終わらない、そんな効用もある一冊である。

 

出版社:青春出版社
書名:医者も驚いた!ざんねんな人体のしくみ
著者名:工藤孝文
定価(税込):1,080円
税別価格:1,000円
リンク先:http://www.seishun.co.jp/book/21022/

西日本新聞 読書案内編集部

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